「『罪と罰のスピカ』は、『悪を裁く』物語の気持ちよさを確かに持ちながら、その快感に寄りかかりすぎないのが魅力です。罰が下った瞬間のカタルシスはあるのに、同時にその手つきの危うさが残る。だから読者は、カタルシスを味わいながら同時に怖くなる。この二重感情こそが、ただの断罪ものに終わらない推進力です。物語が進むほど、単発の出来事の是非ではなく、『裁く側の正しさはどこまで許されるのか』『誰が救われて、誰が置き去りになるのか』という問いが太くなっていきます。事件は一つひとつ形を変え、軽い違和感から、人の人生を崩す決定的な局面へとスケールしていく。その積み重ねが、主人公スピカを単純なヒーローにも単純な怪物にもさせません。繰り返されるエピソードの積み重ねによって、スピカという存在が『正義』でも『悪』でも言い切れない輪郭を獲得していく。読み終えたあとに残るのは、答えではなく、自分の中の"正しさ"が少し揺れる感覚。その揺れこそが、この作品の強度だと思います。」