選考作品へのおすすめコメント
マンガ大賞2025一次選考作品

『劇光仮面』山口貴由

  • 「特撮オタクを拗らせすぎて100周くらいして却ってまっすぐになった、みたいなキャラクター達で紡がれてきた『劇光仮面』。今までは「ヒーローもの特撮」から正義の魂を受け取ったアマチュア達が中心に描かれてきましたが、ここにきてヒーロー系のおもちゃを作り続ける大手メーカー勤務の真理りま、つまりは「アマチュアではない」人物をメインに据えたエピソードが展開されています。アマチュアだからこその真っ直ぐで大きな愛を、ストイックかつ自由に表現してきた実相寺の立場と違い、業界にいるが故の縛りや、ビジネスとして関わらなければならないからの夢のなさ・自由でなさに直面するりまの状況を描くことで、そのような側面も含めての特撮愛を感じる物語になっています。逆境を経てもなお劇しく光る魂のありようは、ヒーローを愛する大人たちにより一層ブッ刺さっています。」

    「創作物をフィクションと知りながら本気になり救われることは誰にでもある。彼らと我々はなにも変わらない。ただ彼らの場合、純度がずば抜けて高い。」

    「山口貴由先生の作り出す世界観が大好きです。特撮やヒーローへのリスペクトをバシバシ感じる、独特な濃い世界は山口先生ならではです。」

    「剥き身の日本刀みたいに危険なマンガ。身を覆い、顔を面する者たちの物語。作中、いわゆる怪人的な怪異の力を持つ者たちが現れてくれて本当に気が楽になった。救いをえた。身を覆い、顔を面する者たちに、真っ向から相対してくれる存在があの世界にいてくれたことがありがたかった。でなければ、身を覆い、顔を面する者たちが、ただのイカレ野郎になってしまうように思えたからだ。良かった、相対する者がいてくれて。応える者がいてくれて。彼らをただの狂人にしないでくれ。ただ、その怪異の者たちもそれぞれの事情を抱えながら雪の中で消えていくのがこの世界の無常だ。戦いは続く。」

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