選考作品へのおすすめコメント
マンガ大賞2024一次選考作品

『8月31日のロングサマー』伊藤一角

  • 「高校2年の夏休み最後の1日を、記憶を失わないまま永遠にループすることになったらーー。そんな設定のラブコメ。海辺の街に住む男子校生・鈴木くんは、8月31日を何度も繰り返すタイムループにはまっている。抜け出そうと試行錯誤する中で、同じ境遇で同い年のかわいい女子高生・高木さんと知り合い、協力するうちに次第に親しくなっていく(まだ序盤だけど)。1章につき1日の顛末が描かれ、日付が変わる深夜0時に環境はいったんリセットされる。次章は同じ8月31日の同じ時間から『やり直し』となるのだが、前回の行動に伴う記憶だけは引き継がれ、それを2人とも理解している点がミソ。その記憶を足がかりにして、少しずつではあるが、フラグの分岐をたどるように8月31日の日常を変化させていく。ーーなどとくどくど書いたものの、本作は脱出行そのものの過程を追う冒険譚などではもちろんない。ループからの脱出は作劇上の『しかけ』であり『背景』だ。読みどころはむしろ、男子校育ちで女子に免疫がなく、その反応に内心いちいちキョドりまくりな鈴木くんと、彼氏と別れたばかりで今どきの女子高生らしく大人びたところはあるが根は素直な高木さんが、お互いを理解したり、ときにハレーションを起こしたりしながら少しずつ心を通わせていく、ゆっくりとした時間の流れにある。強い太陽の光と、アイスが似合う濃い青の空の下、何度でも1日をやり直しながら次第に、互いにとってかけがえのない相手になっていく。そのドキドキはなんというか、願っても絶対に実現されない10代の理想郷。まさしくエンドレスサマー。どんな着地になるか、この先も楽しみ。」

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