選考作品へのおすすめコメント
マンガ大賞2023一次選考作品

『ヤコとポコ』水沢悦子

  • 「終わってしまった。寂しい。でも全7巻は皆さん手に取りやすいかと思います。これは未来のお話。インターネットが廃止された"革命後"の世界はのんびりとした時間が流れています。そんな世界で暮らす漫画家のヤコと、アシスタント猫型ロボット(てきとうモード)のポコ。ある日、昔流行った『ゆっこペン』を見つけます。作者のゆっこさんの思い出の色のペン。『うらやましかった友達んちの猫色』『一番長生きした金魚色』『好きだった男子の家の屋根色』などなど。全部で何色あるかわからないし、書いてみるまでどんな色かもわかりません。その色が自分の思い出と同じ色だと幸せになれるとかって噂。ゆっこペンをてきとうに集めつつ紡がれる優しい物語の数々。じんわりと心に沁みて暖かい涙が流れる。SNSや仕事やプライベートに疲れたら好きな物を食べたり飲んだりしつつの?んびり読んでほしい。大好きで大切で、ずっと一緒にいてほしい漫画です。」

    「インターネットが廃止されアナログな暮らしを送る一方で意思をもった動物型ロボットと暮らす人々が描かれた、ほんの少し未来が舞台の作品。主人公は、いつでもヤコを喜ばせようと一生懸命の猫型ロボットポコと、ポコが大好きだけど上手く愛情を伝えない(伝えられない)人間の女の子ヤコ。ヤコの不器用さにハラハラしつつ、時折見せる深い愛情にホロリとさせられます。ヤコは漫画家なのですが、もう一つの軸として描かれる漫画家たちのお話も、創作したことがある人には刺さるんじゃないでしょうか。やさしくて、あたたかくて、でも少しせつなくて、胸がぎゅ~~っとなるような作品です。」

    「ネコ型ロボットのポコは、マンガ家ヤコのお手伝い役。『てきとうモード』設定なのでベタもトーンも失敗ばかり。がんばれポコ、負けるなポコ! ......という藤子F的お話ではあるが、実はハードでシビアな『マンガ家マンガ』であることにびっくり。ある売れっ子マンガ家が、悪口ファンレターをシュレッダーして自宅地下のプール槽にため、その中で『貴重なご意見ありがとうございます!』と叫びながら泳いだり、連載を打ち切られたマンガ家が、次回作がんばりましょうという編集者に、目は三日月のままで『どういう覚悟で...人の子供殺してるの?』と迫ったり、絵柄がかわいいだけに、ギャップが尋常でない。また、それだけの『プロの覚悟』に満ちた作品だと思う。一見メルヘンチックな世界だが、ある災害を機にネットが禁じられ、パソコンは過去の遺物となり(したがってマンガは全部アナログ描き)、クルマは時速20キロ以下でしか走れないなど、風刺に満ちた未来像も読みどころ。とにかく、表紙からは想像もつかない内容なので読んでみてほしい。昨夏、全7巻で完結したので、これがワンチャンス!」

▲ ページの先頭へもどる