選考作品へのおすすめコメント
マンガ大賞2023一次選考作品

『作りたい女と食べたい女』ゆざきさかおみ

  • 「グルメ漫画が好きなのもので、その類は見かけるとつい手にとって読んでしまいます。この漫画も最初はそんな感じで購入しました。主人公は料理を作るのが好きな野本さん。SNS映えする料理を作っては投稿して満足しているが、実は本当に作りたいのは"デカ盛りグルメ"!!そんな欲を満たしてくれるのが同じマンションの隣の隣に住む春日さん。ひょんな事から仲良くなり、野本さんが作りたかったどんなデカ盛りもペロリと平らげてくれる春日さん。この需要と供給コンビが織りなす、料理を作る、料理を食べる、この行程が見てて超気持ち良い。単純なグルメ作品としても良作なんですが、この漫画はそこにGLという要素が入ってくるのです。このさじ加減が、とても絶妙なんです。僕は一巻を読んだ時はその要素に気付かず、2巻でその要素が少しづつ入ってきて、そこで初めて気付きました。BLに比べると今まであまり描かれてこなかったGL。そこにチャレンジしている事がまず素晴らしくて、GLに対しての知識があまりない読者に対して凄く優しいスピードで教えてくれているんです。そこに感動すら覚えます。最近発売された3巻はよりそこについて掘り下げるシーンがあります。繊細なテーマを扱う際にはその物語の最初に『今回のお話には以下の表現が含まれます』と、読む前に優しく教えてくれます。作者と編集がこの作品を大切に大事にしているのが伝わってくるようで、本当に良い作品に出会えたと思えます。この作品は、、、受け流せません!」

    「『きのう何食べた?』女性版と思っていたが、きのう~は初めからカップルになっているのに対し、こちらは『私は女性が好きかも』と気づくところからスタート。2人の関係性だけでなく、現代日本社会の女性に対する抑圧を浮かび上がらせ、それでも彼女たちが自分の意志のもとに生きようと決意し、方法を模索する姿を描く。めっちゃパンクな、戦いの物語と思います。」

    「去年推薦文を書いた時には『恋愛感情抜きに』と記したのだけれど恋も出てくる物語でした。必ずしも恋愛でなくてもいいのかなと思うけれど、周りにある『普通』という型に馴染めない自分や、自分を否定する周りの環境ありきでのそれぞれの自己再生、自己肯定なんだなと。他の登場人物も増えてきてまたそれぞれに人生があって、食べること、生きることが描かれている作品。」

    「人生でどこか窮屈に生きている女性二人が一緒に過ごしていく上で優しく穏やかに生きやすくなっていく様子に、読者も読んでいて救われる優しい物語。」

    「よくある女の子と女の子が楽しく料理をしておいしいものを食べる漫画かと思って読み始めたので、とても沢山のことに注意を払って描かれた漫画であることに驚きました。作中に出てくる、彼女たちを取り巻く煩わしく無神経な言葉たちの多くは残念ながらかなり私自身も経験したことがあるもので、読みながら何度も『わかる~!!』と頷いてしまいました。だからこそ純粋に、『なりたい形』『いたい場所』を選び取る彼女たちの姿に惹かれる、そんな作品でした。」

    「食欲を刺激される作品。性別がどうこうというより、人間の根本的な欲求を底に、人間関係などが折り重なって表現されている。間口は広く底も深い。」

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