選考作品へのおすすめコメント
マンガ大賞2023一次選考作品

『Artiste』さもえど太郎

  • 「パリの街や人の空気をリアルに描きながら、さまざまな事情を抱えて生きる人たちが、それぞれの居場所を見つけていく物語。レストランの仲間も大好きですが、主人公の住まうアパルトマンの住人たちもみんなイカしていて、そのへんで適当に手に入れたワインでも持って、『Ca va ?』と遊びに行きたくなること請け合いです。」

    「パリの片隅で、不器用で心優しい青年が、自分の居場所を見つけていく物語です。不器用な主人公は最初なかなかいい関係を作れないのですが、不器用なりにあきらめず人を信じて地道にコミュニケーションを積み上げていくことで、周りの人との良い関係を作っていきます。職場ではレストランの厨房でリーダー的な役割なのですが、そんな彼の姿勢が曲者揃いのメンバーをすこしずつまとめあげてゆきます。チームが機能してゆく過程は痛快というよりは、どこか穏やかな気持ちにさせてくれます。また、主人公の暮らすアパート に集う個性的な面々との交流もコミカルでとても暖かい。読むと穏やかな気持ちになれます。このマンガを読んだ後いつも思うのです。めんどくさいこともあるけど、人と交わることって素晴らしいなと。人を信じて交流することの大切さを教えてくれるマンガです。人付き合いに疲れてしまった人に。」

    「じんわりと暖かく面白い人たち旅がしたくなります。」

    「一般にレストランは、おいしいものをお腹いっぱい食べて、心地よく酔い、友人たちと語らう。そういう場だし、そうあるべきだ。しかしサーブされた料理やワイングラスの向こうには、それぞれ立場の違うたくさんの職業人がいる。その一人ひとりに家族があり、友人がいて、無数の人生がある。このマンガはジルベールという内気なシェフを通して、皿の向こうにどれだけの数のカラフルな人生があるかを想起させてくれる。テーブルの上や厨房で起きていることなどの表層的な部分だけの物語ではない。その皿を客に供するため、誰が何についてどう貢献したのか、その周囲では何が起きて、どんな人間模様が繰り広げられているのか。そんな人の営みが描かれている。私たちに見えているものの向こう側にはどれほどの世界が広がっているのかを示唆し、向こう側に暮らす一人ひとりも、また『私たち』であることをを教えてくれる。既刊8巻以下続刊。」

    「主人公もさることながら、キャラクターひとりひとりが凄まじくチャーミングな作品。人間関係ひとつとっても、ひとすじ縄ではいかない。シンプルには片づかない。でも、共存共生する道はあり、違う者同士だからこそ、最高の一皿が生まれたりもする。『多様性』『ダイバーシティ』に興味があってもなくても、ぜひ一読したい作品です」

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