選考作品へのおすすめコメント
マンガ大賞2021一次選考作品

『マイ・ブロークン・マリコ』平庫ワカ

  • 「もう勢いが凄い。全ての感情をこれでもかと描いていて怖くなるくらいでした。全1巻で終わるのもまた良し。」

    「去年の年始にこの作品を読み、2020年の5冊のうちの1冊は決まったな、と衝撃を受けたことを覚えている。不条理を感じる世の中で、片割れのように思える存在が急に居なくなってしまったらどうなるのだろうか。自分にはその人しかいないと感じるまでの存在が消えてしまったら。しかし考える間もなく日常は続いていく。死んだものに会う術は、生きていく中で想いを馳せる以外にない。時間と共にそのものの形は変わるかもしれない。それでも自分は構わないと思うだろう。生きているものが背負い、肩入れや共感しながら進んでゆける存在があった事実を幸福と思い、生きていくことが全てなのでは無いだろうか。そんなことを考えさせられたが、読む人によって思うところが様々あるだろうと感じる。気になった方には是非一度手に取っていただきたい。」

    「年初に出たあとわりとすぐに読み、またすごい勢いのある漫画が出たなあと思いましたが、衝撃作としてやはり今季推したい一作です。表題の作品は自殺で親友を失くした主人公が、その子の遺骨を奪って逃げるストーリー。作中の時間は短いけれども、暴力的なまでの喪失感や理不尽な世界への怒り、その世界で共に生き延びてきたのにひとりで勝手に逝ってしまった戦友への怒りなど、ひたすらにヒリヒリ心が焼けつくような展開なのですが、決して暗くなく火の玉が駆け抜けていくようでした。友のために抗い、怒り尽くし、暴れ、しかしどんなに足掻いても戻ってきてしまう日常のなかで、物語の結末に見えた一筋の光もまた友なのだなあ。短くとも濃い刺激的な一作です。」

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