選考作品へのおすすめコメント
マンガ大賞2021一次選考作品

『紛争でしたら八田まで』田素弘

  • 「実世界を下敷きとして国際政治や紛争をマンガというエンターテインメントに昇華する、『ゴルゴ13』にしかなし得なかった世界観を継承するマンガが現れた。それもより軽快にテンポよく、誰にでも楽しめる読み味で。主人公は地政学リスクコンサルタントであり「世界を回る解決屋さん」の八田百合(1巻では美女キャラとして登場して行く先々でビッチだなんだと罵倒されるが、巻数を重ねるごとに人間らしいおかしみのほうが前面に出てくる......というのは脇道の話)。世界中の小さな町や村で起きる、小さくとも深刻な民族対立や格差による断絶を、八田が知性と地政学とプロレス技とローカルフードで解決していく。取材の深さも物語の膨らませ方も噛み砕き方も見事の一言。われわれ日本人が感覚として捉えるのが難しいミクロな民族紛争について、ディテールの説得力も盛り込みながら、トルク高くグイグイ読ませていく。そこにある痛みを想像する作者のイマジネーションも素晴らしいし、東京海上日動リスクコンサルティングの上席主任研究員の監修もディテールの読み応えに何役も買っている。もちろん伴走者であり、監修者をアサインした(であろう)編集者も超GJ。いい作品はいいチームが生むという好例に違いない。」

    「地政学リスクコンサルタントの八田が、世界各国の企業の依頼を受け、「地政」学の「知性」を駆使して民族同士や政治グループの対立を解決してゆく。イギリスやミャンマー、ウクライナ、タンザニアなど世界を股にかけるスパイ映画のような展開や民族紛争などのテーマも扱うシリアスさが同居しつつも、民間の人間として泥臭く現地人と関係を築いていくのが面白い。各地の料理、風俗に対するマニアックな知識も盛り込まれ、一種の旅行記的にも楽しめた。2020年に第1巻が刊行されたこともあり、ブレクジットや北極圏航路など比較的最近の地政学リスクが題材となっていることも評価できる。」

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