選考作品へのおすすめコメント
マンガ大賞2018ノミネート作品

『メイドインアビス』つくし あきひと

  • メイドインアビス(6) (バンブーコミックス)

  • 選考員コメント・1次選考

    「美しいファンタジーなのにキャラクターの心情が痛々しくリアルで切ない。」

    「萌え系のファンタジーなのかと、最初拒絶反応をおこしそうでしたは、読んだら描写、世界観、全部かっこよかったです。」

    「特に絵柄は同人誌調なのですが、侮ることなかれ。本格冒険譚マンガです。特徴はよくあるバトルものや恋愛などに一切浮気(?)せず徹底して冒険をテーマに描かれていることです。それが意外と新鮮に感じられるくらいテーマの幹は太く、想像力を刺激する点では純粋です。ただし、それ以外の横道は消して太くはないため、冒頭に描いたように"冒険"マンガが読みたければお勧めなマンガです。が!絵柄は極めて柔らかい(?)ので、そこが全体の雰囲気を柔らかくしています。特に読み手の嗜好に対してピーキーな反応を示す漫画ですが、端的な面白さが際立っているマンガです。」

    「恥ずかしながらアニメ放送で初めて読んだコミック。画のかわいさから想像も出来ない(褒めてます)冒険と危険さとグロさがあってとてもギャップが大きく、非常に引き込まれた。主人公たちの冒険心と危険でも前向きな姿勢、そしてキャラの愛くるしさが一気に読ませる漫画。続きが早く読みたい。」

    「4、5巻で恐ろしい存在感を示したボンドルドというキャラクターがこの作品の魅力を決定づけたように感じます。現世にないものを求めるからこそ深淵に手を伸ばすわけで、そのとき現世と同じ姿のままでいようだなんて虫が良すぎるんじゃないか。現世の常識、倫理、自己同一性、そういうものを捨ててでもその先へ向かおうと思えるのかどうか。その残酷で純粋な問いを突きつけられることの快感を堪能しました。」

    「恐らく最後、みんな戻れて大団円、ということにはならないんだろうなと思います。行ったが最後戻れないことは十分わかった上で、何があるかもわからないのに何が何でも行こうとする。そんな彼らが最後に何を見るのかがとても気になります。」

    「とにかくかわいい絵柄にハードなストーリーで、表紙のイメージとは全然違う。もしあの表紙の雰囲気で「ほんわかかわいいファンタジーかな」と思って遠ざけていた人はぜひ一度読んでみて欲しい。つくりこまれた世界観で、植物や動物も空想上のものなんだけどどことなくリアル。椎名誠さんのSF作品のような・・完全に作り物なのに、生々しい。また、ストーリー展開も実は結構ハード。主人公の女の子がこれまたかわいいが全然甘やかされない。むしろシビアな現実などもバンバン見せられるのも見所のひとつ。正直、たぶん合わないかな?と思って手に取った。でもそのあとすぐに購入しまくり毎日1冊買ってしまうほどはまった。そういう意味では自分の考えを変えさせてくれた作品であった!」

    「アニメの最終回で号泣してから原作読んだ周回遅れなんですが猛省を込めて。まだ未完なのでアビス自体の謎は残ったままだけど、それが何だろう、とワクワクする気持ちとまあそれはもう何でもいいや、という気持ちと両方半分ずつぐらい。それぐらい今までに描かれた魅力的な世界観と骨太な物語にどっぷりハマった!何回スルーしてたんだ俺...と本当に猛省。」

    選考員コメント・2次選考

    「作者の趣味が活きてると思います。」

    「想像の上の上を行く世界観に度肝を抜かれた。厳しすぎる「アビス」の困難に何度もハラハラドキドキさせられました。こんな冒険活劇は見た事ありません。」

    「ナウシカ級の壮大な作品に出会ってしまった、と1巻を読んですぐ2巻のシュリンクを開封。アニメ化された時にあらすじを読んで、お。これは売れそうな予感...と思い、そしてその予感は裏切られることはなかった。今でも売れ続けています。いつかスタート地点に帰ることが約束された冒険ではなく、もう二度と戻ることはできない、それでも知りたい!という小さな2人の冒険に今もまだ胸が熱い。早く続き!読ませて!」

    「他の冒険マンガはバトルしたり恋愛したりありますが、そんな不純物をギリギリまで削り取った超が付くほどの純冒険マンガです。登場人物があんまりいないからこそ、余計に背景が広大で深く暗く感じるこの漫画は、引くに引けない冒険と理不尽が盛りだくさん!この世界には仕掛けしかないです(笑)。もちろん主人公とそれを取り巻くキャラクターたちはいますし、冒険を乗り越えた先の成長の物語はあるのですが、この漫画の主食はキャラではなく世界背景そのもののように思えますし、そこまで純粋に割り切ったマンガってちょっとないと思います。加えて実はすごいのは、冒険ものですので残酷な描写も盛りだくさんなのですが、だからこそこの幼児的な設定画が際立ち嫌悪感を感じなく先に進めれるのもすごい。そうやってサクサクと読み進めてゆくと、この漫画(冒険)はどこまで行くんだろうと、設定を読むだけでワクワクドキドキできます。考察好き、設定好きにはたまらないマンガです。」

    「たいへんかわいらしいキャラクターたちが、度し難い危険生物と邪悪な人物がひしめく巨穴「アビス」へと挑むファンタジー冒険マンガ。たいへんかわいらしいキャラクターたちが、過酷すぎる状況のなかで取り返しのつかない不可逆な傷を得るのは、煽情的で、過激で、偽悪的で、悪趣味にすぎて、実質ただのポルノではある、んだろうけど。「だが、それでも進むのが冒険なのだ、それでこそ彼女らの意志は進むことを望むのだ」という輝きを生むのが、たいへんタチが悪い。今後も楽しみだ。アニメ化どうすんだこれと思ったけど、すげえ良かったじゃないかアニメ。みなさんもお好きですなぁ...。」

    「個人的には以前から推薦していた作品なので、アニメ化を経て読者が増えたのか、ここにきてのノミネートには正直なところ驚きました。ともあれ、本当に素敵な作品だと心から思います。」

    「ほんわかした絵柄に隠された「痛み」と「苦悩」がたまらないです。素直に応援したくなるキャラクターも好み。」

    「アニメ化によって「可愛らしい絵とキャラで展開される王道探検ジャンル・ボーイミーツ&ガール」の皮を被った暴れ馬という存在感を遺憾なく発揮して、タイムラインに「んなー」の嵐を巻き起こした功績は大きく、アニメから原作へという幸せな逆流現象を体現した作品」

    「かわいい絵柄なのに度し難いエグい作品でした。でもそこがいい。なんでもかんでもサクっと物事が進んでしまう物語を私は読みたいと思っていません。リコやレグが「奈落の底」に近づくにつれ、絶望にも近い経験をしているのにそれでも諦めない姿に胸が熱くなるのを感じました。あまりにもグロテスクな場面で読むのが途中で辛く泣きそうにもなりました。それでも読み続けたのは「こんなに面白い作品を今読まないでどうするんだ」という思いからです。読んでいなかったことが勿体なかったです。これまでの展開を考えるとこれからの旅はよりいっそう辛く、険しいものになると思います。しっかりと見届けたい。」

    「可愛くてカッコイイ漫画。ファンタジーなのにリアルな説得力があって引き込まれる。」

    「怪物を追う者は、自らが怪物と化さぬよう心せよ。おまえが深淵を覗くとき、深淵もまたおまえを見返している。 まさしく深淵を探求する物語『メイドインアビス』を読むとき、このよく知られた言葉を思い起こさずにいられません。未知なるものへの強烈な憧れ、それを掴もうとする不屈の意志、それは冒険ドラマのヒーローには必須のものですが、日常を暮らす社会においては狂気ともみなされます。 冒険から戻らない親を追いかけるという点で同じ構造を持った『 HUNTER×HUNTER』でも、主人公ゴンの真っ直ぐ前を見る意志はときに読者からして「イカれてる」とすら思えます。宮崎駿の映画『風立ちぬ』では、主人公の堀越二郎はサバの骨にすら飛行機の設計を重ねる天才肌の夢追い人として描かれますが、仕事に夢中になれば結核の妻のそばでも平然とタバコを吹かし、やはり日常的感覚からするとあまりに異様な人物に見えます。そして重要なのが、彼らのこの狂気こそが物語を駆動し、読み手を日常から解き放ってくれる源だということ。逆に言えば、日常に適合した感性のままで冒険をするだなんて、私としては生ぬるく、虫の良い話だと思えてしまいます。 さて『メイドインアビス』の4巻、5巻では、主人公達がボンドルドという敵役と対峙するエピソードが描かれます。この人物は深淵へ至るためには手段を選ばない狂気じみた怪物として描かれていて、非道な人体実験や環境破壊を何の呵責も感じずに繰り返すだけでなく、自らの精神や肉体すら探求の道具として消費していて、すでに日常的な意味での人間ですらなくなっています。彼の行為は本当におぞましく、彼が編み出した「カートリッジ」という技術には絶句する他ありません(ちなみにその内容を知ってから4巻の無邪気な表紙を眺めると、下手なホラー映画DVDのジャケットより吐き気がするという仕掛け)。ですが、いやだからこそ、私にはボンドルドがヒーローに見えるのです。深淵を見つめ続ける彼の憧れ、そこへ手を伸ばす彼の意志......ぐじぐじと悩む凡百の主人公達よりよほど純粋じゃないですか! 5巻ではボンドルドと本編の主人公リコがこんな会話を交わします。「君は私が思ってるより ずっとこちら側なのかもしれませんね」「私は...ロマンは分かるのよ」この一瞬、日常的な善悪の彼岸――ただ未知なるものを目指すという境地でふたりが理解し合う。もちろんリコはすぐに「あなたはこれっぽっちも許せないけど」と続け、ふたりは激しく対立します。ですが日常に住まう私からすると、ふたりともすでに怪物なのです。生きては戻れない深淵を覗き、深淵から魅入られた怪物たるヒーローたち。冒険ドラマを紡ぐならそれでこそ! と心で喝采を上げる私も、怪物に近付いているのかも知れません。そこで、ああこのマンガそのものがひとつの深淵なんだな、と思い至るんです。」

    「映像化と漫画の世界。どちらの世界も「メイドインアビス」であることが損なわれず存在する。1巻が出た当初から、その枠線に惚れっぱなしです。決してナナチがかわいすぎるからといって選んだわけではありません、決して! 彼ら・彼女らが探し求めるものが、彼ら・彼女らが見つけたかったものかどうか分からない、そんな展開で今後も目が離せないストーリーテリングと、大穴に広がる限りある底なしの世界観、大好きです。」

    「絵によるイメージが読み進める内に払拭され、その後の展開が楽しみに読ませてくれました。地下世界に広がる冒険ファンタジー。その中で出会うキャラクターがまた印象的で良いです。なんとなく、ゲームの聖剣伝説2を思い出しつつ読んでしまった。そんなRPG的な雰囲気もあります。」

    「元々店舗でも押していた作品でしたが、映像化に伴いのノミネートだと思います。 この作品の良さは、リアルファンタジー(等身大)ではないかと思います。 RPGのゲームや凄い能力を備えて無敵の主人公ではなく、一歩間違えば常に死と隣り合わせの冒険...。 そしてその独特の世界観も更にその緊張感に一役買っていると思います。 絵が独特なので手に取りにくい方もいらっしゃると思いますが、そこは勇気を持って読んでみ欲しいです!」

    「過酷さ、凄惨さ、そして面白さ、度し難い。」

    「かわいい......。それぞれのページ、それぞれのコマが、ひとつのイラストとして成立しているようにかんじられるくらい魅力的でした。自分がファンタジー好きなこともあるのかもしれませんが、絵画のように絵そのものを楽しみがならページをめくることに幸せをおぼえました! 大好きなものがたくさん詰まったおもちゃ箱をほじくり返した時の感覚、図鑑をずっと眺めているときの感覚に近いかもしれません。本として手元に置いておける幸せを強く感じさせてくれたという意味ではダントツでした。」

    「片道切符の冒険の果てに、何が待つのか。決してハッピーとは言えない何かを見るような気がするのですが、それでも結末まで全部見たい、と思います。一番最後まで読まないと後悔すると思う作品だったので1位です。」

    「この作品が特別なのは、私自身に限っていうと、絵柄の苦手さを超えておもしろかったことに尽きる。とても可愛い表紙を見て、私は勝手に「自分の好みとは合わないんだろうな」と思っていた。もちろんすごく可愛いんだけど、なんとなく{ファンシー}とか{癒し}みたいな内容なのかな、と思っていたから。でも、読んでみたら全然違った。むしろこのイラストだから、余計この世界のダークサイドが際立っていた。作りこまれた世界観。アビスという「大穴」。そこに住む生き物や自然、アイテムなどの存在感。読めば読むほど深みにはまり、気づいたらすぐに現在までの発売巻までを買い揃えていた。冒険譚としても、主人公達の成長物語としても、そしてミステリーとしても、この世界に没頭できるはず。それもすべてこの「世界」の作りこみのなせる業。絵が苦手と思う人でも、だまされたと思って一度読んでみてほしい。すでにアニメ化された作品だが、ゲーム化されても面白いだろうなと思う。」

    「古今東西のストーリーのパターンは「日常から非日常に行き、日常に帰る」構造にあるといいます。しかし本作で描かれる、底知れぬ穴・アビスへの道のりの背景には、冒険譚につきものの希望ではなく、死への旅路としての「二度と帰れない日常」があり、だからこそさまざまな出会いと別れのシーンにぐっとくるのかもしれません。穴の底には何が待っているのか。深淵を覗く本能から逃れられない人間の性をついた作品だと思います。」

    「まさに大穴にどっぷりハマる没入感。エグい。イタい。あと、ちょっとエロい。いや、かなりエロい。対ボンボルド戦は、敵の造形、戦略の緻密さ、どんでん返し、すべて秀逸で圧巻。」

    「最初は萌え系のやつかー、と思ったら中身は勝ちでした。世界観の設定画が非常にレベルが高く、ストーリーもワクワクするもの。今後の展開が楽しみです。」

    「アニメが非常に良い出来栄えでしたので興味を持ち、原作のマンガを読み始めたのですが、とにかく考え込まれ、作り込まれ、描き込まれた世界観に魅入られますし、アイテムや設定の1つ1つに作者自身の拘りをひしひしと感じます。アビスという大穴の最深部で行方不明となった母親を探すべく、主人公達は冒険していきます。表紙のかわいい絵柄を見る限りでは単なる少年少女の冒険譚と捉えられるかもしれませんが、内容は一言では表現できないほどの困難と苦悩の連続があり、血生臭い描写も多く、息を飲むシーンがたくさんあります。それでも屈しない主人公達に引き込まれるし、アビスの様々な謎が気になってどんどん読み耽ってしまう。そんな魅力が非常に詰まっている作品です。」

    「今更感はありますが、それでもやはり一読の価値あるお勧めの作品。「しっかりとした設定があるんだから、描写過多でも咀嚼してくれればいいじゃない。」「冒険の内容は過酷だけれど、かわいければ、ちょっときわどい表現もいいじゃない。」と言わんばかりの作品。伏線を含め、作り込まれた世界観と大穴の深淵にどっぷりと落ちていきたいところ。漫画ですもの、手に取る理由は何でも良し、まずは登場人物のかわいさに騙されてみましょう。でもそれを越えると本当のお楽しみが。空想を凌駕する切迫感のある冒険が漫画好きのあなたを待っている。」

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