選考作品へのおすすめコメント
マンガ大賞2014ノミネート作品

『さよならタマちゃん』武田一義

  • さよならタマちゃん (イブニングKC)

  • 選考員コメント・1次選考

    「「闘病もの」であり「愛妻もの」でもあるが、主人公を取り巻く患者らの人間模様も、抑えた筆致ながら深く温かい。」

    「感情てんこもり!最後はあたたかな気持ちに。ほっこりした絵の優しい世界から織り成される、病気になる現実のくるしみ、厳しさ。でもその中でがんばる姿にたくさんたくさん元気をもらえます。奥さんとの愛情と絆に毎回涙...。毎日の、ふつうの生活の尊さを教えてくれる一冊です。」

    「精巣腫瘍と診断された、当時、職業マンガ家アシスタントであったマンガ家さんによる実話マンガ。かわいらしい絵柄と明るくふるまう作者ですいすい読めますが、次第にわき上がってくる生きていることのありがたさや、そばにいてくれる人のありがたさ。最後にやってくるカタルシスには、一緒になって泣けるはず。昨年で最も読んでよかったと思えた作品です。」

    「35歳で突然「精巣腫瘍」を宣告されたマンガ家アシスタントである筆者の、がん闘病体験マンガです。マンガ家ならではの人物描写は、ともすれば暗くなりがちの闘病ストーリーを読みやすくしてくれます。点滴の注射が下手な医者や、抗がん剤治療による吐き気との戦い、副作用でにおいが気になってしょうがないときは、同室の患者さんの食事どころか芳香剤やほのかな体臭まで厳しいこと、等々。体験した者にとってはいろいろ思い出してしまいちょっとつらいこと。ですが、読んだ方にはこの大変さがちょっとでも伝わるかと思います。奥さんや仕事仲間のやさしさ、同室の患者さんたちのユーモラスだけどどことなく寂しい胸の内、同じ病気の青年との出会い等々。患者仲間だけに、亡くなる方もいます。でも、それが現実だと気づかされます。とにかく、少しでも多くの方に手に取っていただきたいですし、特に患者の家族の方は、患者の気持ちが伝わるのではないかと思います。」

    「シンプルな絵とおちゃらけたタイトルに騙されるけれど、内容はハード。でも安易なお涙ちょうだい物ではない。確かに泣かされる場面は幾度もあるけれど、悲しいよりも嬉しい涙が多い、そんな闘病漫画です。」

    「精巣腫瘍(睾丸癌)に若くして掛かってしまった本作者である武田先生の闘病エッセイコミックスです。恐怖や葛藤など苦悩は沢山あったと思いますが、誰にでも読めるように良い意味でライトに闘病生活を描かれているので、読者は重くなりすぎず、読むことが出来ます。 癌治療の大変さや、それに携わる人と人との関わりも上手く描いた作品です。」

    「精巣ガンの転移が発覚した著者が、闘病を経てマンガ家を目指すエッセイマンガ。生と死の物語であり、夫婦の物語であり、仕事の物語でもある。たった1巻のコミックスに、じつに濃密な物語が詰まっている。」

    「ある日妻が発見してくれた自分の異変。そこから始まる闘病の日々を支えてくれたのもやはり妻。お互いを見つめあい助け合う夫婦のあたたかさには何度も泣かされました。命に真剣に向き合っている物語なので印象的なせりふが数々ありました。中でもドキッとしたのは、主人公の武田さんに勤め先の漫画家の先生がかけた「迷惑かけたくない気持ちもわかりますけど、病気なんだからそれはあきらめませんか」という言葉。家族ではなくても本気で心配し、治ると信じているからこそ言える言葉だなと感銘を受け、またそのように大切に想われている武田さんの人柄の良さが伝わってきました。一年間の闘病生活で自分の命だけでなく周りの同じ病気と闘う人たちの命とも向き合った武田さんから、日々を大切に生きることをあらためて教えられた1冊でした。」

    「誰かと生きられるというのは、なんて凄いことだろう。今この身体と、この心を持って生きているということ。そして、あなたの傍にいるということ。私は生きてきて何度マンガに救われたか判りませんが、これから先のいろんな時も、きっと多くのマンガに支えられていくんだろうなと、この作品を読んで思いました。声高に薦めたくはなくて、ひっそり、届く人に届くと良いなと思います。」

    選考員コメント・2次選考

    「実体験の闘病入院生活を描いた漫画。画が可愛いらしいので、内容はつらくなる場面もあったけれど、落ち込むことはなかった。むしろ前を向いて、生きる力を存分にもらえた、感じたコミックでした。周りの支えもそうだけれど、同じ病気で入院されている方々との励ましや別れ。自然と涙が溢れた。今自分自身が健康でいられるこの状況を本当にもっと大切にしたいと思う。この感動は忘れられないし、何かに打ち負けそうな時に読み返したい大切にしたい1冊。漫画を超えて、多くの人に手に取ってもらいたい1冊。」

    「これ読んで泣かない人がいるのか。自分の周囲にいる人の大切さを再認識させられる良作。自分としては、マンガ大賞がなければ手に取ることもなかったであろう作品だけに、是非、私と同様この作品を知らない多くの人に知ってもらいたい。」

    「たくさんのかたに読んで欲しいと、心から思いました。絵が可愛いので、ヘビィな内容でも、ドキドキソワソワしないで、じっくり読めるのが良いです。」

    「人は誰しも周囲の人に支えられて生きている。支えるのは、その人の変わりはいないから。オンリーワンとはこういうことなんだろう。そう思わせてくれる。」

    「「闘病もの」であり「愛妻もの」でもあるが、主人公を取り巻く患者らの人間模様も、抑えた筆致ながら深く温かい。」

    「作者の優しさ。作者を取り巻く人達の優しさ。そしてなにより一所懸命な妻の優しさ。涙なしでは読めません!ガンという重いテーマなのにこれほど心温まる気持ちにさせられるとは・・・ほんといろんな人に薦めたい!泣くよって。」

    「精巣腫瘍と診断された、当時、職業マンガ家アシスタントであったマンガ家さんによる実話マンガ。かわいらしい絵柄と明るくふるまう作者ですいすい読めますが、次第にわき上がってくる生きていることのありがたさや、そばにいてくれる人のありがたさ。最後にやってくるカタルシスには、一緒になって泣けるはず。昨年で最も読んでよかったと思えた作品です。」

    「一次で自分が選んだ作品が候補に挙がったのははじめてです! 折角ですので自信を持って一位で推薦させて頂きます。癌というものは、軽微なものでもやがては死へ繋がって行く恐ろし病気です。 本作はセリフもさほど多くなく、ライトなイラストで読み易いながらも、その闘いの壮絶さはずっしりと感じさせる作品です。ただ日々を何となく過ごしてしまっているなぁという方には是非読んで欲しい一冊。」

    「命をかけて描いた、ということが伝わってくる。マンガとしても輝いているが、病とそれにまつわる諸々の苦しみの向こうにある希望を感じます。」

    「ここ1年で一番ボロ泣きしながら読みました。仕事でアレコレ考えているときにふと手に取って読んで思いっきり泣いて、読後に自分が今大きな病気でないことに改めて感謝して、毎日大事に生きたいな、と思い、これから大切な人が病気になるシチュエーションが増えてきた時に、どう構えるかを考えてみたりしました。誰にも理不尽に襲いかかってくる題材だけに、いろんな思いを人に抱かせるような気はしますが、作者の優しい視点をひとときでも共有して読めれば...。多くの人に勧めたいです。」

    「自身の闘病を赤裸々に、文字通り魂をこめて描いた作品。一見ほのぼのした作画も、読み進めるうちに「今、この絵で描く必然性」があることがわかり、「人間仮免中」に通じる鬼気迫るものを感じました。」

    「絵柄のかわいらしさによって、闘病記の持つ悲壮感ができるだけ軽減されており、まず物語に入り込みやすくなっている。そうやって読者の心をつかんでから、患者、医者、看護師、看病に来る人たちそれぞれのことを丁寧に描いている。抗癌剤の副作用とそれに戸惑う作者自身の様子が抑えたトーンで描かれていて、派手に描かれるよりもかえって心にズシンと来た。」

    「吾妻ひでお「アル中病棟」や卯月妙子「人間仮免中」もそうだが、徹底した自己の客観化ができているので、どんな特異な状況でも納得して読める。自伝は近いと自分語りになり、遠いと偉人伝記のようになってしまい距離感が難しいが、この漫画はちょうど良い距離を保っている。」

    「(男なら)誰にでも起こり得る状況で身につまされる内容で一気に読んだ。」

    「思い切り泣いても大丈夫な時間と場所を選んで読んでください。通勤通学の電車の中とか、仕事の休憩中とかに読むと大惨事になります。」

    「闘病記。三十も半ばを過ぎてもう若くもない人間のひとりとして「病を得る」というのはなるほどこういうものかと、ひどく腑に落ちた漫画でした。他人事だが共感はできるという、ほどよい距離感と絵柄かと。」

    「闘病記という感動と同情の器になりやすいジャンルを、ストレートに受け入れ認めて良いのかと迷う気持ちもあるけれど、そうした背景を消してもなお浮かび上がってくるさまざまな感慨がある。不幸を並べれば泣くだろうといった安易さはまるでなし。アシスタント暮らしの長い漫画家がガンに罹り、転移も見つかり治療に臨むストーリー。そこで自身の、不安に苛まれ副作用にのたうちまわる苦闘ぶりをさらけだし、同情だけでなく反発も買うような姿を見せた上で、自分が同じ境遇になったら果たして、どのように振る舞うことになるのだろうかと思案させる。自分と同じ病院に入っていた、治る人もいれば末期で死を待つばかりといった人もいたりと、さまざま境遇にある患者たちを描くことによって、人それぞれに人生があり葛藤があって、それでも賢明に生きているんだと気づかせる。とても複雑で奥深い人間の世界を、漫画という技法を使い、親しみやすくてのぞき込みやすくしてみせた作品。漫画の持つとてつもない可能性を改めて感じさせてくれた。」

    「35歳で突然「精巣腫瘍」を宣告されたマンガ家アシスタントである筆者の、がん闘病体験マンガです。マンガ家ならではの人物描写は、ともすれば暗くなりがちの闘病ストーリーを読みやすくしてくれます。点滴の注射が下手な医者や、抗がん剤治療による吐き気との戦い、副作用でにおいが気になってしょうがないときは同室の患者さんの食事どころか芳香剤やほのかな体臭まで厳しいこと、等々。体験した者にとってはいろいろ思い出してしまいちょっとつらいこと。ですが、読んだ方にはこの大変さがちょっとでも伝わるかと思います。奥さんや仕事仲間のやさしさ、同室の患者さんたちのユーモラスだけどどことなく寂しい胸の内、同じ病気の青年との出会い等々。患者仲間だけに、亡くなる方もいます。でも、それが世の中の現実だと気づかされます。少しでも多くの方に手に取っていただきたいと思います」

    「読んでてどんどん泣いてしまった。頑張ってください。武田さん!応援しています。」

    「病気の厳しさを通して、日常のいとおしさや大切なひとといられるじかんの価値を改めて感じさせてくれます。ずっと続くような気がしてしまう『今』をたいせつに生きよう。そして人間ドッグにいこう&連れて行こうと思います。」

    「この作者が、実際に自分の身に起こった闘病生活を、マンガにしたこの作品。暗い話かなと思って最初読んだのですが、とても心温まる作品でした。病気になって、自分だけでなく、懸命に介護を続ける奥さんの気持ちもまた素晴らしいなと思います。職場の先生やスタッフさんが復帰できるまで、みんなで待ってくれていたり。病院で共に闘病生活を過ごした、病院仲間の人々の様子まで描いてあり。「あぁ。そうだったのか」なんて思いながら読んでしまいました。病気になった人にしかわからない世界。でも、それが作者の視点ながら暖かく伝わってきました。」

    「ずいぶん前に買ってあったのに気が重くてずっとページを開けなかったが、一度開いたら最後までおもしろく読ませる、とてもいいマンガだった。入院患者仲間など、周囲の人々がちゃんと「キャラ」として魅力的に作りこんであるのもよかった。」

    「この漫画を読んで以降、ひとつの日課ができた。読んだ方には想像がつくだろう。そう、風呂にはいる度に両のタマを確認するようになったのだ。元フランス代表プロッフットボーラー、ティエリ・アンリは言っている。「キャプテン翼のおかげでサッカー選手になれた」、と。一冊の漫画が人生を変えた好例だ。まさか齢30を数えたころに自身の生活に影響を与える作品が登場するとは露ほども思わなかった。漫画ってすごい。」

    「たまたま手にとったら面白かった。こういうことがあるからマンガはおもしろい。」

    「年を重ねるごとに、ノンフィクション物の漫画の方が印象に強く残る傾向だと思っています。その大半が重いテーマなので読み終えた後は大概ブルーになるにも関わらず丁寧に丁寧に綴られていて今年一番"きれいな"漫画だったとおもいます。」

    「きっと想像を絶する苦しみがあったと思います。優しさを感じさせる絵やこのタイトルにも関わらず、その大変さが伝わってきました。あまり説明的な部分がなかったのもよかったです。」

    「大声では言いたくない。声高になんてもってのほか。それでも、誰かを大事に想う人ならば。大事にしたい誰かがいる人ならば。きっと、ここに描かれている気持ちも出来事も、決して他人事とは思えません。そういう人に届くと良いなと願うので、小さな声で、でもしっかりと。この作品を推したいのです。日常のすごく大きな逃げようのない出来事を、それぞれなりにどうにかこうにか引き受けつつも、切迫感もありつつ、どこか抜けた感じで描くその筆致は、重くも軽やかでもある気がします。あなたや、あなたの大事な人がつらい時に、良かったら、読んでみてください。おそらくは、あなたの気持ちに寄り添ってくれると思います。」

    「自分に降りかかった物事を伝える、ってのは、意外なほどに難しいです。その瞬間に味わったビビッドな感情は、時を経るごとに忘れていってしまう一方で、逆に、事実を伝えてからじゃないと、その感情で共感を得ることはできないのに、事実は、ある程度時間が経たないと、まだ状況が動いているので、「事実」にすらならない。歴史にもならずに、感情の吐露だけでもない、良質なルポって、力量のある人と、伝えるべき価値のある出来事と、タイミングがすべて揃わないと生まれない、奇跡的なものなんだなぁ、と思います。

     がんの発見、抗がん剤治療、それを取り巻く人々、それは本人、家族や同じがん患者だけでなく、とりまくお医者さんや看護師さん、職場の人々まで含めて、まるっと、伝えられれます。特に、その核にある、抗がん剤治療、というものが、フィクションや取材では絶対到達し得ない、実体験マンガでしかありえないディテールをもって伝えられたことは、歴史上なかったんじゃないでしょうか。

     しかも、その伝え方そのものにも悩んだこともぜんぶ描かれていて、これこそ、作家さんがベテランの超大家であったとしたら、きっと滲み出してこない空気。それは、一見ほのぼのとした、あの表紙に凝縮されている、と思います。作者ご本人はもとより、奥さんに、幸あらんことを。」

    「自分は、未婚ゆえにどこまで作品の良さを理解できていると言えない部分もあるかもしれませんが、夫婦の関係に胸うたれました。加えて、それ以外の登場人物たちも非常に命を灯火を揺らしていて、グッときました。」

    「とりあえず、かな?」

    「なんだろう、しみじみと良い。」

    「これはコメントできません。漫画を読む人にも読まない人にも、ただただ、そっと目の前に差し出したい漫画です。」

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