選考作品へのおすすめコメント
マンガ大賞

『3月のライオン』羽海野チカ

  • 3月のライオン 2 (ジェッツコミックス)

  • 「出てくる言葉が、重いけれど、でも自分に言われているような気になる場面が多い。そんな中出てくる暖かい人達が余計暖かく感じる人間味ある作品です。あ、2巻で出てくる将棋がわからない人用の絵本。あれ実際に欲しい!すごい!」

    「愛する人を亡くした人、重い病を抱える人、親からの愛情を受けられない子供、厳しい勝負の世界に身を置く人...登場人物は皆、痛みを抱えています。この作品では、痛みを抱えた者同士が向き合ったとき、暖かみが生まれます。苦しいからこそ人に優しくできる。このことに再び気付かせてくれて、まだその心がこの世にあることにホッとさせてくれます。」

    「面白い漫画を書く人は、何を題材にしても面白い。絵本のようなタッチの世界の中で、今後どのように主人公が孤独と戦い、戦士(将棋士)として純度を増していくか楽しみ。」

    「熱血な野球少年に、背中が哀しいオヤジ、「おお、そんな手を打ってくるとは!」と驚かされた。作品の世界が大きく広がり、持ち味の切なさも倍増し。特にオヤジ方面を攻められるとメロメロになってしまいそう。」

    「前の作品よりこっちのが好きです。将棋やりたくなる。」

    「零君が細い黒い糸の上を一生懸命歩き続けてるような感じがして何とも胸の奥をキュウキュウとしてくれるマンガで凄く良かった。零君の感情で静かなものが突然爆発する様がバクンバクンときた。今まで自分にとって未知の世界だった将棋のプロの世界も少しわかったりニャー達をつかっての将棋の説明はわかりやすくて素敵すぎっす。できたらニャー達のマンガも描いてほしいっす。早く続きが読みたくてたまらないのです。」

    「 一昨年「ハチワンダイバー」が席巻した将棋マンガ界に羽海野チカが「参戦」したことに最初はびっくりしたが、2巻でもう傑作感に揺るぎなし。「みんなオレのせいかよ!?/ふざけんなよ/弱いのが悪いんじゃんか/弱いから負けんだよっっ」......しびれます。すごいです。掲載誌が「ヤングアニマル」というのも素敵です。」

    「天才棋士の物語なら過去にもあったし今もある。けれどもそのどれとも違ったキュートなキャラで、どれよりもシビアに棋士の孤独をうかがわせた物語が「3月のライオン」ではないか。中学生棋士を騒がれ、期待と嫉みを浴び、家を出て暮らし始めた何もないマンション。もしも3姉妹が近所にいなかったら。熱すぎるライバルが存在しなかったら。姉妹もライバルもそれぞれに苦しみを抱えていて、けれども前向きに生きている。そんな人々に触れることで主人公も変わっていけた。欠けたところを持った人々がつながりあって、補い合って生きていける素晴らしさを噛みしめられる傑作だ。」

    「よし、読むぞ!と心構えがいる作品です。それこそ棋士が勝負に挑む時のような。画面から、主人公を通して作者の気迫が伝わってくるから心体が弱ってる時にはオススメできないです。(笑)それだけ心揺さぶられます。」

    「ライバルや先輩もじょじょに出揃いつつあり、とても読み頃に。じいさんたちや中年が、ものっっそ、いい。零くんが色っぽいんです。去年の例の世紀の対戦は、まじでリアルライオンでしたね。「3月のライオン」の主人公・桐山零は、東京の下町でひとり暮らしをする、17歳のプロ将棋の棋士。幼い頃、事故で家族を失った零くん。彼の前に現れた3姉妹との心の交流や、将棋界の頂点を目指す一癖も二癖もあるライバルたちとの戦いで、零はどう変わっていくのか? 心の傷は癒えるのか? そして、プロ棋士界の頂点を極めることができるのか?......という物語です。このまんがの舞台である将棋の世界は、一般女子には、かなり馴染みのないジャンルではありますが、これが、読むと、おもしろい。いいまんがというのは、ぜんぜん知らない勝負の世界を、まるで自分が昔からその世界の住人であるかのように、追体験させてくれるものです。例えば「頭文字D」(峠の走り屋まんが)とか、「スラムダンク」(高校バスケまんが)とか。運転免許すら持っていないし、高校の体育の授業以来、バスケットボールに触ったとこがない、生まれてこのかた、骨の髄まで、文化系気質のこんな私でも、このふたつのまんがには、心底燃えました。もちろん、萌えてもしまいましたが。「3月のライオン」も、確実にそんなまんがのひとつです。なにより、すばらしいのは、あの、メガネを描かせたら当代一の羽海野さんが、なんと、主人公に、こんどこそ、「黒縁めがね、黒髪」の風貌を与えてくれたのです。もちろん、「ハチクロ」も血中メガネ度の高いまんがではありました。数えたら20人以上メガネキャラが登場しましたから。でも、惜しむらくは、はぐちゃん、竹本くん、森田先輩、修ちゃん先生という、主人公クラスのキャラは、誰ひとりとして、メガネではなかったという。しかし、この「3月のライオン」は、主人公が真っ向メガネ。わーーーーまんがの神様(手塚治虫?)、ありがとう!私は、これが読みたかったです。いいじゃないですか、零くん、将棋を一生懸命指した末に、目が悪くなったんですよね? きっと。そういう、意味あるメガネこそが素敵なんです、伊達ではいけません。しかも、零くん、黒い学生ズボンに白いカッターシャツがイン、ですよ? 繰り返します、ズボンにシャツがイン。 黒縁めがね、黒髪で、黒ズボンに白シャツがイン。 黒縁めがね、黒髪で、黒ズボンに白シャツがイン。 黒縁めがね、黒髪で、黒ズボンに白シャツがイン。......3回くらい繰り返すと、ちょっとオブセッションぽくって、大島弓子先生のネームみたいですね。ふふ。「3月のライオン」を未読の女子、さあ、読み始めるタイミングは今です。」

    「架空の町「六月町」月島・佃界隈がモデル。河がいい。実にこの物語にはつくづく河が必要だ。そして、こいつを読むと思わず河に行きたくなる。人工的な。でもそれでも河はぐっと心に入り込んでくるなー。と、こいつを知ってから、公園でビールが1位の俺は河のそばでビールが1位になりやがりました。」

    「将棋に生きるひとたちのものがたり。ものがたりはまだ始まったばかりで、見えないところもたくさんあるのですが、すでにやさしかったりかわいかったり笑いがあったり、暗さに取り込まれそうになったり、それでも真摯に生きていたり、とネガポジのふれ幅が広くて、どうなることかとはらはらします。見守り続けたいマンガ。」

    「勝利のためにすべてをなげうつヒリヒリするよなプロフェッショナルの世界を描きつつ、なんでこうも暖かいのでしょう......。あの「ハチミツとクローバー」の次の作品の舞台装置に、一見地味な棋士の世界を選んだ羽海野チカの自信と知見はやっぱりただ者ではない、と実感させてくれる既刊2巻。ハチクロをハチクロたらしめた、全編にわたって濃密だった「甘酸っぱい」青春要素が、本作では2巻に入ってライバルの二海堂くんのTV解説(名場面!)が出てきたあたりでやはり健在だったと気付かされる。東京の水辺の下町の風物のリアルな描写も物語に奥行きを与えている。どっぷり浸れます。」

    「「将棋」という敷居を高く感じてしまう題材を羽海野チカ氏が描くと、こんなにおもしろくなる!と見せつけられた。多くの期待を裏切ることなくやっぱりおもしろい、と言える凄さ。少年の葛藤と成長を主に置き、個性的で素敵なキャラクターと共に繰り広げられる人間ドラマと将棋の対局は読むものをあきさせません。笑ったり泣いたり一緒になってうなってみたり。雑誌で追いかけていて今年一番掲載を楽しみにしていたマンガ作品です。僕の今年の1番です。」

▲ ページの先頭へもどる