選考作品へのおすすめコメント
マンガ大賞

『おやすみプンプン』浅野にいお

  • 『人間なの?鳥なの?なんなの?と突っ込みたくなる主人公プンプン。でてくるキャラクターすべてが個性的でいい。先の展開がまったく読めないこの話、いったいどうなっていくのかとても楽しみ。』

    『全く前例がないような作品。周囲の人物は普通なのに主人公「プンプン」とその家族だけは鳥のような、不思議な存在で描かれてます。また作品世界そのものも現実と空想世界が混在するようで、それでいてリアリティにあふれています。こんな素晴らしい表現ができる浅野いにお先生の作品に、大人になる一歩手前で出会えた人は幸福だと思います。』

    『2巻の帯で伊坂幸太郎が「『前衛でありつつ王道を走り抜ける』という凄いことをやろうとしている気がします。」と書いているが、それに同意。例えば、プンプンの容姿がああでなかったら、もっとドロドロしたところの目立つマンガになっていたのではないか。そうしたら、掲載誌も変わっていたかもしれないし、前衛ではあるが王道ではなくなっていたかもしれない。また一方で、神様が出てこなかったり、叔父さんが叫ばなかったり、担任の先生がキレなかったら、凡百のボーイミーツガールな話になっていたかもしれない。これだと、前衛とはほど遠い。そういった意味では、このマンガの前衛と王道の配合加減はうまくいっているのでないだろうか。だからこそ、あらすじを他人に説明しようとすると陳腐なことしか出てこないのに、異様に印象に残っているのだろう。』

    『「浅野いにおは、紛れもなく日本の漫画界における古典となりうる作品を生み出せる才能を持ち合わせた、途方もない天才だと思う。圧倒的な世界観や、時に嫌悪感すら抱かせるリアルで濃厚な人間描写。従来の作品からそれらは見られたが、今回の新作に投入された「プンプン」はそうした彼の作品の方程式を「意図的に」逸脱した、究極的なキャラクターである。とことん精緻な世界観の中で、唯一シンプルな線で描かれた不思議な存在「プンプン」。だが、誰よりも何よりもこの「プンプン」には、我々自身を投影せずにはいられない魅力が満ちみちているのだ。』

    『壊れてしまった社会を日常として生きる現代の若者群像にこだわってきたと思われる浅野いにおが小学生の世界を描いた、しかも青年誌で。そうすることで子供たちの周囲にいる大人(になってしまったかつての若者や子供)のジコチュー的な身勝手さや保身や理不尽さが、これまでの作品以上にビシビシと読む者に入ってきます。自己嫌悪なしには読めないと思いました。というか、自分の子供からもこんな感じで見られているのかと思うと、周囲の大人の言動によって子供が社会を知っていくその理不尽なプロセスに慄然です(脱線していますが)。単行本2巻(第23話)からの中学生編がどう展開するのかが注目度大。しかしビジュアル的にもフキダシでしゃべらない設定ひとつとっても、読者の思い入れを拒むような主人公プンプンの造形は前衛です。』

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