選考作品へのおすすめコメント
マンガ大賞2017一次選考作品

『ふしぎの国のバード』佐々大河

  • ふしぎの国のバード 3巻 (ビームコミックス)

  • 「女性探検家イザベラ・バードが書いた「日本紀行」の漫画化。当時の日本の様子が伺える作品。土地に生きる人々の暮らしや日本人の考え方が伝わってくる。家族全員で読める漫画。」

    「100年前、バードさんと通訳のイトが北の知られていない文化を旅しながら体験、見て聞いていくお話。私が、旅したことのある場所が多く出てくるのですが、たった、100年前にこんなに「荒れて」いたなんて。そして、「日本の勤勉スタイル」は、こういう文化から形成されてきたのかとしみじみ思いました。最新刊の「3巻」に、「100年先の人々がこの国の滅び去った文明の記録を読んだとき...」という台詞があるのですが、確かに私はこの漫画を通してたくさんの人や風習と交じり合った気がします。」

    「イザベラ・バードの『日本紀行』のマンガ化というだけでも相当やっかいなのに、独自のアレンジや解釈を交えて面白くしていることに心底感心します。その最たるものが通訳のイトこと伊藤鶴吉の造形で、史実では目が細く平凡な風貌なのに、俺様無愛想イケメンにして、バードお姫様(史実では47歳だが20代にしか見えない)と絡ませるなど、まさに「アリ!」な展開に和みます。日光でバードが「ケッコー!」と叫ぶのはオリジナルかと思ったら、何と『日本紀行』にありました。当時の日本の風俗描写も誠実で手抜きなし。これがデビュー作? 本当にいい仕事だと思います。」

    「明治11年の東京を江戸から北海道まで旅した実在のイギリス人女性、イザベラ・バードの旅行記「日本紀行」を基にした漫画。当時50歳近いバードを若く、好奇心旺盛だがお茶目でちょっとドジな性格に、通訳の伊藤を仏頂面で慇懃無礼だが甘いものに目がない男前にしたりと現代向けにキャラクターを立たせつつ、当時の日本の姿は忠実に再現して描かれている。バードの目から見た世界が描かれているので、日本語は読めない書き文字で表現されている。まさに異国を旅している気分が味わえる。実際東京の周辺は時代劇などでもよく見るような馴染みのある光景だが、旅を進めるにつれて日本人も忘れてしまったかつての日本が現れてくる。日本の景色や風習に対して驚く異国人のバードの反応を見て楽しむのではなく、読者はむしろバードと同じ目線で当時の日本を知って驚くのだ。3巻は新潟に到着した所。この後、さらに東北を進み北海道に渡りアイヌの村を訪れるまで、まだまだ旅は続く。非常に楽しみです。」

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