選考作品へのおすすめコメント
マンガ大賞2017ノミネート作品

『約束のネバーランド』出水ぽすか・白井カイウ

  • 約束のネバーランド 1 (ジャンプコミックス)

  • 選考員コメント・1次選考

    「畜舎の豚や、牛や、鶏が自分たちはいずれ喰われる身だと知って日々を生きている、とうことはないだろう。そういったことを思考し、自覚するだけの知能を豚も、牛も、鶏も持ってはいない、ということにとりあえずはなっている。けれどももしも豚や、牛や、鶏と意思疎通が可能だったら、喰わないでと人間に訴えるだろうか。そんな訴えを聞いて人間は、分かった喰わないと言ってあげることができるのだろうか。
     それが家畜というものだと理解して、長く豚も、牛も、鶏も喰ってきた人間が今さら、コミュニケーションが可能になったからといって、もう喰わないといってあげられるとは思いづらい。いや、そこは同じ知性のある者と認めて喰わないという判断をする可能性もある。喰おうとしていた相手への優しさというよりも、喰われる相手から放たれる哀しや怒りの感情に苛まれることを良しとしないという、そんな逃げの感情を理由に。
     宇宙人は、あるいは異星人はどうだろう。人間よりも遥かに高次の存在が、人間の知性を認めながらもそれを家畜と認識していて、叫ぼうとも怒ろうともひるまず逃げもしないで喰らう可能性はあるのか否か。あるとしたらそれはどういった心理によるものなのか。所詮は低次の家畜であるという認識。叫ぼうとも哀しもうとも認めるに値しない感情だという理解。そして相手の叫びがたとえ気持ちを揺さぶったとしても、それを超える美味への欲望が上回っている状況。いろいろと考えられるけれど、実際に彼らがどう考えているかは分からない。
     だから逃げるしかない。その孤児院から。白井カイウ原作で出水ぽすか作画による『約束のネバーランド1』(集英社)。ママと慕う優しい女性の下で少年や少女たちは毎日を明るく、そして楽しく暮らしている。毎日のように試験が課せられている厳しさはあるけれど、それで良い点をとれは大好きなママに褒めてもらえると、少女も少年も頑張って試験に臨んでいる。そしていつか外に出る日を夢見ている。
     そう、12歳になるまでに子供たちは里親にもらわれるという形で外へと出て行く。孤児院に置いてある本などから外の知識を得て、そこには幸せがあると信じて、孤児院に暮らす子供たちは外に出る日を待っている。そしてその日もコニーという少女が里親にもらわれることが決まって、仲間たちに見送られて出て行った。でも、大切なぬいぐるみを忘れていってしまい、届けようとしたノーマンとエマの2人は、閉められていた裏口の鍵を開け、夜の門へと近づいてそこで見てしまう。トラックの荷台に横たわったコニーと、周囲を蠢く化け物を。そして知ってしまう。自分たちの立場を。
     食物連鎖の最上位にあると思い混んでいる人間が、実はそうではなかたっという設定の物語には幾つも類例はあるけれど、そうしたシチュエーションを孤児院に閉じ込められ、養われた子供たちに当てはめているというところがひとつ衝撃的。どうしてそんな状況が生まれたのか。出られない柵の外、塀の向こう側はいったいどうなっているのか。そもそもそこは一般的に言われている地球なのか。世界観への興味を煽られる。
     奴隷なり臓器移植のための人身売買という、現実の社会でも起こりえる状況にも通じる設定ながらも、それだったら逃げ出せば官憲なり正義の味方がいて、解放される可能性を信じられるだろう。『約束のネバーランド』の場合、外に出たところで逃げ切れるものなのかがまるで見えない。豚舎や牛舎や鶏舎を逃げ出し野生に帰って家畜たちが生きられる可能性よりも引くそうな生存の可能性に、ひとつのデッドエンドを見てしまう。
     だからといって止まり続ければ運命は同じ。いったいどうする。ギリギリの時間までを孤児院にあって自分の能力を高めながら、虎視眈々と反撃の準備を進めるべきなのか。それで解消され得る問題なのか。天才とはいいながらも子供に過ぎないノーマンとエマ、そしてレイの3人による葛藤と模索の日々に同情を向けてしまう。子供たちにあって異常なまでに能力が高い3人も、果たしてコニーのような運命を辿る予定だったのか、違う道があったのか。そんな可能性も浮かんで物語における子供たちの位置づけを、いろいろと想像してみたくなる。
     少年向け漫画誌にありながらも衝撃的で残酷な状況を持ち込み、圧倒的な画力で日々を楽しく遊びつつ、けれども迫る危機に怯えつつ勇気を出して挑もうとする子供たちの様々な表情を描いた漫画として今、屈指の作品と言えるだろう。そしてまだ始まったばかりの世界で、見えない未来がいったいどこに通じているかを追っていける楽しみもある。それは悲劇か。それとも新たな希望か。続きを見守りたい。」

    「楽しい孤児院での生活・・・なんてあり得ないだろうが、それどころではなかった!!そこは、人間を食らう鬼たちの商品を育てるための農園だった!!!!そんな残酷な現実を知った子供たちの今後の運命やいかに・・・・・・。独創の世界設定、ストーリー展開のテンポのよさ、未知の点の残る人間関係など、今後の展開に期待させる1冊。」

    「可愛らしく和やかな始まりから、一転して一気にシリアスに。いったい、誰が誰の裏をかいているのでしょうか?テンポよく展開される頭脳戦にドキドキします。」

    「とんでもないファンタジー設定を極力抑えながら、心理戦が楽しめる。少年ジャンプの底力を感じさせられます。」

    「徐々に明かされる世界観と謎に引き込まれる。」

    「本来は来年投票すべき作品かと思いますが、週刊作品は刊行ペースが早く、旬も短いので先物買いで。」

    選考員コメント・2次選考

    「「こんな作品がまだ世に出てくるだなんて、これだから漫画を読み渡る事はやめられないのだ」と臆面もなく言います!美麗でファンシー、それでいてどことなく哀愁を感じさせる絵柄からは想像もつかない、幼い子供達が立ち向かう重厚で鼓動が早まるようなダークサスペンスストーリー。一度このギャップに引き込まれてしまったら、もう後戻りする事は出来ません。現実とおとぎ話の隙間を練り歩くような絶妙な世界観の下、絶望からの脱却を図る主人公達が希望を見付けれるのか、一瞬たりとも目が離せません。」

    「まだ2巻と浅いのと、もっと機が熟してからと内心思っていましたが、やはりこの面白さには負けてしまいました。大人一人の監視下に置かれた子供達。そんな世界には謎と裏があり、子供達はその今いる"施設"から脱走を試みるという展開。この大人と子供の緻密な計算された、やり取り、駆け引きが面白い。良質な物語。一筋縄ではいかない展開。果たして子供達が脱走し、世界を見るのか、それともこのまま終わってしまうのか、続きがたまらなく楽しみ。さらに加えて、たまに見せる鋭い目線や表情など、また引きやアップなどがとても巧い。惹きつけられる。」

    「施設からの脱出劇の設定はオーソドックスだが、複数の駒を配した頭脳戦に転じることで化けた。『週刊少年ジャンプ』では『デスノート』以来の感触。」

    「予想ができない展開にハラハラどきどき面白い!ああ~~~~次が読みたい!待ちきれないって気持ちにさせてくれる漫画です。単なるダーク系漫画ではない奥の深い原作と作画にも満足。おすすめです。」

    「第1巻で判断するのは早すぎるとも思ったが、選考中に出た第2巻、そして最近のジャンプで追っているうち、傑作との確信が揺るがなくなったので1票投じます。先が読めない神経戦サスペンスという意味では『DEATH NOTE』の再来みたいですが、そこに出水さんのダークでメルヘンなアートワークが絶妙にマッチして、ちょっと類例のないすごい破壊力を生み出していると思う。恥ずかしながら作者2人とも今回初めて知りましたが、すげえ才能はまだまだいるんだなあと感嘆しました。今年話題を集めること必至の逸品。」

    「脱出もの(?)って、好きです。一緒に考えて「ほら」とか「やっぱり」とか「なるほど」とか、そういうのができるのも、自分のペースで読み進められるからこそだと思います。」

    「まだ巻数が若いが、最初からずっと面白い。内容が内容だけに、嫌悪感をもつ人も多いかもしれないが、登場人物たちの心理戦、時折見える別の顔に"ゾクッ"とする。今後が楽しみ。」

    「孤児院で幸せな毎日を血の繋がらなっていない「家族」のみんなと過ごしていた3人の天才少女と少年。11歳の彼らが、ある日「とんでもない事実」を突きつけられて、その孤児院を脱走する計画を立てる。然も、0歳児~11歳までの38名全員で。寮母の「ママ」と3人の頭脳戦が兎に角、面白い。いったいどうやったら、脱走できるのか。その後、生きていけるのか。自分には考えが及ばず読み進めていくしかなく私自信も11歳の頭脳に身を委ねている状況というのが、新感覚で面白いです。」

    「今いちばん続きが気になる漫画といえばこれを挙げる方も多いのではないでしょうか。次から次へとハラハラドキドキの要素を出し惜しみしないスピーディな展開に、原作者の先生の引き出しの多さを感じます。作画も魅力的でグイグイとページをめくらされました。」

    「緻密に設計されたストーリー、キャラクターと配置、世界観。無駄のなさが作品に緊迫感をもたらしていると感じます。怖いシーンが繰り返されるわけでもないのに切迫した状況が伝わってきます。それにしてもキャラクターが長々説明的なセリフを続けるわけでもないのに、ちゃんと状況がわかるのは素晴らしい。」

    「親がなくても楽しい孤児院での生活・・・を過ごしていたつもりの孤児達だったが、それは虚構の上に築かれた世界だった!!真実は、鬼たちのための食料を育てるための牧場だった!!!!食われるために育てられている。そんな残酷な現実を知った子供たちは、孤児院からの脱出を決意する。大脱走を想わせる緻密な脱出計画。舞台設定の独創性、ストーリー展開のテンポのよさについつい引き込まれてしまう。絵もうまいが、人間心理を踏まえた登場人物相互の関係の描き方も秀逸。今後の展開が期待される。」

    「「箱庭」からの脱出という、よくある設定なのに、大人と子供たちの駆け引きから目が離せない。」

    「つくづく、ジャンプの漫画の面白さの瞬発力は凄いです!閉塞感と力強さにものすごいエネルギーを持っている漫画です。まだ話数も少ないながらにどこまでの深さと高さを持つのか非常に楽しみでポテンシャル抜群な作品です。」

    「平和に暮らしている世界が、実はそうではない。外の世界がまったくまだ見えていない分、今後の展開が気になってしょうがないです。この施設から子どもたちが協力して「ママ」の魔の手から逃げれるのかワクワクします。そして、逃げた先は本当に良い世界があるのか。謎の多い話ですが、それが少しずつわかっていくのが面白いです。」

    「「1日で一気に購入してしまう作品」というのに出会えるのは本当にまれだ。読み終わってすぐに、公式サイトを探して、次巻の情報を探す。待てないほどの興味。なるほど次は4/4発売なんだ・・!名作小説「わたしを離さないで」を彷彿とさせる世界観と、その中で生き抜こうとする子どもたち。すでに2巻出ているけれど、あっという間に読んでしまった。約束のネバーランドは、続きが気になってしょうがなくなる作品だった。「わたしを離さないで」は似たような世界観でありながら、そこに既存のルールにはむかう子どもたちの様子は描かれず、当然脱出も出来ない。たんたんと、ただ搾取されていく子どもが描かれていた。でも、本作の子どもたちは優秀で、そしてエネルギーに溢れている。希望が見える。主人公エマいいやつ。裏切り者探しのシーンはドキドキしたし、意外性に驚き、ワクワクした。そして読み進めるごとに深まる謎・・。とりこだ。とりこになった。絵も見やすく、たまに見せるキャラクターたちのドキっとさせるような表情も独特で、面白い。いろいろな伏線と思われる描写も多いので、よくある悲壮感しかない展開とエンディングで終わらないことを心から祈って読み続けていきたい。」

    「ジャンプだとおもって逆にあなどっていた!」

    「「少年向け漫画誌にありながらも衝撃的で残酷な状況を持ち込み、圧倒的な画力で日々を楽しく遊びつつ、けれども迫る危機に怯えつつ勇気を出して挑もうとする子供たちの様々な表情を描いた漫画として今、屈指の作品と言えるだろう。そしてまだ始まったばかりの世界で、見えない未来がいったいどこに通じているかを追っていける楽しみもある。それは悲劇か。それとも新たな希望か。続きを見守りたい」 マンガ大賞2017の候補作として、白井カイウ原作、出水ぽすか漫画の『約束のネバーランド』(集英社)を推薦した文の最後に書き添えた言葉は、自分ひとりの所感ではなかったようで、最終候補作の1冊としてノミネートされてさらなる読み手を得て、その身にひしひしと迫る最後の火への恐怖と、それを乗り越え進もうとするこどもたちの勇気を同時に感じていることだろう。 「そう、12歳になるまでに子供たちは里親にもらわれるという形で外へと出て行く。孤児院に置いてある本などから外の知識を得て、そこには幸せがあると信じて、孤児院に暮らす子供たちは外に出る日を待っている。そしてその日もコニーという少女が里親にもらわれることが決まって、仲間たちに見送られて出て行った。でも、大切なぬいぐるみを忘れていってしまい、届けようとしたノーマンとエマの2人は、閉められていた裏口の鍵を開け、夜の門へと近づいてそこで見てしまう。トラックの荷台に横たわったコニーと、周囲を蠢く化け物を。そして知ってしまう。自分たちの立場を」 「食物連鎖の最上位にあると思い混んでいる人間が、実はそうではなかたっという設定の物語には幾つも類例はあるけれど、そうしたシチュエーションを孤児院に閉じ込められ、養われた子供たちに当てはめているというところがひとつ衝撃的。どうしてそんな状況が生まれたのか。出られない柵の外、塀の向こう側はいったいどうなっているのか。そもそもそこは一般的に言われている地球なのか。世界観への興味を煽られる」 人間のこどもたちが家畜として飼われ養われている施設。そのことを知ったこどもたちが起こそうとする反乱と逃走が本当に成功するかは分からない。そもそも世界はどうしてそんなこどもたちへの残酷を赦し、協力する人間を認めているかもまだ見えない。施設の外に自由な世界が広がっているのかも分からない中で、絶望の未来を未だ感じないではいられない。けれどもそんな閉塞感だけの物語を「友情・努力・勝利」をモットーとする週刊少年漫画誌で連載させるとも思えない。どこかに出口はある。そして救いはある。勝利もある。そう信じて今は1巻を読み、刊行されたばかりの2巻を読んでそして「週刊少年ジャンプ」誌上での連載を追うしかない。 人類のある種の未来を描いたSFとしてだけでなく、絶体絶命の状況、雁字搦めの状態からどうやって逃げ出すのかといった頭脳戦もあって、ミステリとしても楽しめる作品。どこまでも強さがエスカレーションして続く果てしないバトルとも違って、いつか終わりが来ることもきまっている。その時をいたいどう迎えるのか。何が起こるのか。期して待とう。決して少なくない不安も抱きつつ。」

    「子供を食料として育てている孤児院のような施設中のお話なんて、すごい切り口に脱帽したのが最初でした。アナログな世界かと思いきや、子供たちのスコアをテストする環境はハイテクだったり。外の鬼の世界があるという今後の展開があれど、まずは施設内の攻防。頭脳戦、裏切り、伏線がどこまで繋がって行くのか。久しぶりに連載で続きが待ち遠しいです。」

    「こんなにヒヤヒヤするジャンプマンガは『デスノート』以来なんじゃあないかと思う、サスペンスフルな作品です。毎回訪れるどんでん返しに肝が冷えるのにくわえて、エマたちが何と対峙しているのかが未だに不透明なのも、不気味さを際立たせます。週刊少年誌の限界突破な絶望脱出ゲーム。いま、ジャンプを買ったら毎週真っ先に探して読むマンガです。」

    「ストーリーの運び方、人物の描き方、紙越しに伝わる雰囲気、全てにおいてジャンプらしくない、だがそれが良い。という作品。まるでミステリー小説か海外ドラマかのような、次が気になって堪らない仕立てになっている。」

    「投票した作品の中では現在一番楽しんではいますが、2016年に1巻しか出ておらず、本来は投票するならあと1年待ちたいかなという感じだったので3位票に。とはいえ、週刊連載は足が速いのでホットなうちに投票しておきます。雰囲気のある作画と、ミステリアスな物語展開で興味深く読めます。」

    「この候補作になる前から、我が家の小学生男子に「これ面白いんだよ」と教えてもらっていた漫画(息子は毎週少年ジャンプの連載を読んでいるのです)。設定がミステリタッチで、いつも次回が待ち遠しくてハラハラしながら読んでいます。」

    「第一話でガッチリ掴まれました。こんな作品がまさか週刊少年ジャンプで連載されているとは...!孤児院で暮らす子どもたち、でも本当は孤児院ではなくはなく別のある目的で子どもが集められた場所で...設定はありがちですが、ストーリーのテンポがよく、久しぶりにサスペンスものでハラハラワクワクできる漫画がでてきたな、という感じです。」

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