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マンガ大賞2017一次選考作品

『ACCA13区監察課』オノ・ナツメ


ACCA13区監察課(6)(完) (ビッグガンガンコミックススーパー)

「オープニングのヒップでスタイリッシュなサウンドと、背景に流れるオノ・ナツメならではのシンプルな線でありながら、性格も属性もしっかりとにじみ出るキャラクターに惹かれて見始めて、これは面白い上に奥深そうだと思ったのが運の尽き。1週間に1話では先が長いと原作漫画を手にとって読み始めたらもう面白くって、完結の第6巻まで一気に読んでしまった『ACCA13区監察課』(スクウェア・エニックス)。そして漫画でありアニメーションの冒頭からの2話分で、ふっと感じたこの舞台となっている世界における、平和のようで実は生じ始めているきしみのようなものと、それをどうにかしようとする動き、そして主人公でACCAという組織の監察課副課長を務めるジーン・オータスにありそうな裏事情のようなものが、だんだんと濃さを増して物語を転がしていく展開に、作者の構想力の確かさと、そして愛すべきこの世界を作った想像力の豊かさを感じて脱帽する。13の自治区に分かれたドーワー王国という舞台。それぞれの自治区に経済的社会的な事情があって、そんな自治区に生きる人たちの、毎日をしっかりと過ごしながら、明日を夢見ている姿が読んでいてどこか心地良い。食べ物が豊かな自治区もあれば、資源に乏しい自治区もあって、格差に不満を抱かない訳ではないものの、だからといって嫉まず拗ねずに自分たちの自治区に誇りを持って生きている。現実の世界の現実の人たちはなかなかそんな風にはいかない。なぜならそうした格差を埋めて誰もが生きられるようにする仕組みが存在しないから。あってもなかなか機能しないから。『ACCA13区監察課』の世界は違う。資源がなくてもちゃんと配分はあって生きるだけの糧は得られ、その上で自分たちで出来ることをやろうと毎日を過ごしている。押しつけの中での平穏ではなく、自立した心が望む平和。そんなマインドに誰もが浸っている世界がどうして成り立っているかのか?そういったところで浮かぶのがACCAという民間でありながらも権限があって尊敬もされている組織の存在。真っ当に統治をしさえすれば真っ当な世界が作られる可能性を示唆してくれている。そんなACCAを適正な組織に保っていた監察課に迫る廃止の危機。そしてACCA自体が解体されるかもしれないという可能性。どうしよう。そして世界はどうなっていく。といったところで巡らされる謀略は、一重ではなく幾重にも重なって主人公のジーン・オータスを巻き込んでいく。でも流されない。揺れ動かない。淡淡として日々の仕事をこなしながら、その実直さで多くを納得させる。下にあって仰ぎ見て良いとすら思わせる。権力への執着とは対称的な存在。自分を崇めることで誰かが得をしようとか考えない潔癖さ。理想としたくなる人間性がそこにいて、倣いたくなる世界がそこにある。現実にしたい世界観と言っても良い。そんな世界を自らの手で差配できる立場に迫りながらも、大きな変革がもたらす不安や恐れを回避して、スムースな移行を成し遂げつつ、異端を排除してのける謀略の冴えにも触れられる。そんな謀略をしっかりと認識しつつ、そこで自分を主張しないで淡淡と、今の世界の安寧を守ろうと立ち回るジーン・オータスが格好いい。世界の縮図であり、政治の縮図でもある物語。そして様々な人々が様々な場所でそれぞれの日々を生きていることを感じさせてくれる物語が、スタイリッシュなオノ・ナツメの絵に寄って紡がれる。時にコミカルな表情もあって楽しめる上に、シリアスな場面、スリリングな展開もあって引きつけられる。男の格好良さも良いけれど、女の可愛らしさも読んで目に嬉しい。ACCA本部長のモーヴはどこまでも格好いいけれど。だから惹かれたのだろう、年下だとか部下だとか関係無しに。叶わなかったけれど。全6巻でしっかりと完結して、世界は平穏なままかというと火種は残って不穏の芽は摘まれていない。ただそれも含めての平和が保たれているのなら、ひとまずは正解だったということだろう。そんな世界を今も走り回っているジーン・オータスが、各区の優しくて前向きな人々の姿に安心していられる日々が続くことを願い、ページを閉じてシリーズを読み終えよう。」

「わ?おいしそう!の山。主人公のジーンは、13に別れた地区を監察して巡回するのが任務なので、それぞれの土地のご当地フードがものすごい筆圧で設定してあって素敵。読むと「まんがの中のフードがこの世の中で一番食べたい!」熱が沸騰。しかも物語の牽引役はミステリアスな煙草にまつわる謎、というフードネタもおもしろい。6巻で完結なので読み時ですよ? あと、制服万歳!どの服もめっちゃくちゃかっこいい。動く制服姿が観られるなんて、祝アニメ化。」