選考作品へおすすめコメント

マンガ大賞2016一次選考作品

『私・空・あなた・私』いくえみ綾


私・空・あなた・私 (2) (バーズコミックス スピカコレクション)

「20代の娘2人とエステティシャンのその母が暮らす一軒家に、春のある日、中学生女子がたった1人で訪れるところからストーリーは始まる。女子はこの家から「蒸発」した父とその浮気相手の間の子で、ずっと暮らしていた祖父母の家に居られなくなったところを、この家の母(娘2人には自身のことを「胡桃さん」と名前で呼ばせている)が引き取ることにしたのだ。女4人で暮らすことになったその家の、庭の剪定をする若い植木職人(イケメン)がそこに絡み......。などと設定を書いても、未読のひとにはどんな話なのかさっぱり分からないだろう。一人ひとりの関係性と感情の機微を、緻密に優しく時どき残酷にあやなす、いくえみワールドの真骨頂。読まなければ分からない、流して読んでも分からないこの空気(既刊単行本2冊をじっくり読み返すべし)。緊張と、弛緩。ちょっとしたトラブルの予感と、ちょっとしたうれしい気持ち。相手を思いやること、自分を大事にしてやること。真剣さの裏に見え隠れする破滅願望と、いいかげんさの中にある切実な真摯さ。読み込むほどに新しい何かが見つかる。いま連載中で単行本が出ている4作品はそれぞれおもしろいのですが(それだけでもすごいことなのだけど)、15年秋に最新刊が出たばかりの本作を今回は推したい。小道具(アシダカグモ)の存在感と役回りも抜群!」