選考作品へのおすすめコメント
マンガ大賞2015ノミネート作品

『聲の形』大今良時

  • 聲の形(7)<完> (講談社コミックス)

  • 選考員コメント・1次選考

    「小学生の頃、転校させてしまうほどいじめた女の子に償う為に動く男の子のお話。年内に完結となりましたが、内容的にはキツい話もあったのに連載が終わりもう読めなくなるのかと思うと、かなりサビしい気持になります。読後の余韻を感じさせるエピソードが多々有ります。」

    「題材も描法も挑戦的で実験的でスリリング。」

    「耳の聞こえない女の子と、小学校時代にその子をいじめてた男の子のそれからの話。
    過去への後悔はきっと誰もが多かれ少なかれもっているもの。後悔のまんまじゃなくて時をもう一度動かしていくのは自分の小さな勇気ひとつだったりするんだなぁ。
    ピュアで一生懸命な心に打たれました。」

    「 ちょうど12月で全7巻が完結したこともあり、今期これを外すわけにいきません。ろうの少女への苛烈ないじめで始まる本作、最初は読み切りで読んだが、「なんと難しい題材を!」と感心した。その後連載が始まって、この話、長く続けられるの?といぶかっていたが、実は本作の真のテーマは「障害」とか「健常」とかではなく、人間同士の根源的なコミュニケーションの難しさという、普遍的なテーマだとわかって、さらに感心した。全体的に重くてつらい話だが、安易なハッピーエンドに流れず、あのラストを用意してくれた作者(女性なんですね。最近まで知らなかった)にお礼を言いたい。あと、特筆すべきは、手話をする「手」の描写の美しさ。絵も隅々まで気合が入っていて、見事な作品だと思います。」

    「テーマが重い。快活でもお気楽でもない。愉快でもない。楽しくない。居心地が悪い。
    でも、この漫画が週刊少年漫画で連載されたことには大きな意味があったと思う。
    『マルドゥック・スクランブル』の冲方丁がこの才能に触れて自作を書き直したというもなるほどなと。」

    「少年時代に特有の、言葉が足りずに気持ちをすなおに表すことができない葛藤と、打算をいさぎよしとしないまっすぐな感情が、なんの嫌みもなく読み手に届く。重いテーマを扱っていながら、重苦しい空気感にはなっていない。むしろ、しっかり前を向いて人と向き合うことをきちんと肯定したいという意志を感じさせる。多くの読者に支持されたのがよくわかる。少年マガジンの良いところが結晶した作品のように思う。」

    「本当に良い作品て男女問わず、大人にも子どもにも読んで欲しい、
    と心から思える作品だと思う。
    これは間違いなく自信を持って人に薦められる作品です。」

    「7巻で終わってしまいましたが、とっても素敵な作品です。読みきりもとても面白かったのですが、ちゃんと7巻まで、耳の障害以外の人間関係(特にヒロインとヒロイン以外の女性登場人物)が面白く、途中からは障害は物語の少しのエッセンスでしかなくなったところが、逆に好感が持てました。」

    「切なくて苦しくて甘酸っぱく心に響きます。」

    「いじめられた子といじめた子が分かり合える事はそう多くないかもしれませんが、言葉や互いの過去を乗り越えて、生きることを手伝いながら生きて行けたらどれだけ素敵なんだろうと思わされます。」

    「切ない。後悔っていうのはほんとに後からどうしようもないときにやってきて、そしてずっと人を縛り続けるんだということを思い知らされる。いじめっ子もいじめられっ子もそして自分の後悔をおもいだしてしまった」

    「一度(正確には二度)完結させた読み切りからよくぞここまで。マンガの表現手法が何かとやり玉に上げられるいま、とても繊細な部分にまで踏み込んだ表現の機微がちくちくと胸に刺さります。変に引き延ばさずにエンディングにまで到達したのも好印象。」

    「初掲載時、非常にショックを受けた作品。
    「障害」をあたかも個性の如く描いた独特の世界展開には脱帽。」

    「短いようで7巻。一気に駆け抜けた傑作。」

    「 昨年は「絶対1次は通るから...二次で入れればいいとして、私が入れなくても大丈夫だよね!」で、失敗した甘えを存分に反省し、よし、今年こそ、投票しよう!と狙っていた矢先「このマン2015」で先に大々的に1位を取ってしまい、映像化も決定してしまい、泣くに泣けず、かといって昨年の決意と作品の面白さから、引くに引けず、今回、清き(?)1票を捧げることにいたったわけであります。はい。
    以上です。

    こんな物凄いエネルギーを注入しなきゃ描けないようなストーリーを描き続けるということは、とてつもないプレッシャーだったと思います。
    最後までいいマンガを本当にありがとうございました!

    不器用な登場人物達のこれからを応援してます。」

    「もしかしたら対象ではないかもしれませんが・・・。

    自分が今、自分の闇と戦っているか?を問われているような感じ。最後はちょっと急ぎすぎたかも、
    でも大切にしたい作品。」

    選考員コメント・2次選考

    「悩みましたが、やっぱり一番に推したい漫画はこれでした。読むのが辛いエピソードもありましたがもうちょっと長く読みたかった、登場人物達のこれからの姿をもっと読みたかったです。」

    「聾唖者と普通の少年との話、と聞いてぼんやりと「きっとこんなカンジなんだろうな」と抱いていたイメージを見事に覆してくれた。きれいごとでまとめず、いじめや悪意や憎しみや、本人達すらもてあます、なんともやりきれない濁った感情がそのまま描かれていたところに「おお」と思った。混沌を混沌のまま、でもそれぞれが自分の位置で悩み考えている。どれが正解でもないし、どれもが正解でもある。それこそがこの物語の肝だと思う。」

    「少年誌を舞台に聴覚障害者といじめという題材を正面から描き切りました。マンガとしての表現力も冴えわたって見事です。」

    「題材も描法も挑戦的で実験的でスリリング。」

    「心を揺さぶられる作品。大賞をとって一人でも多くの方に読んでもらいたい。7巻で完結しているので、大賞をとるなら今年しかない!」

    「 今回は、この作品を超える候補があるか? というのが個人的に最大の関心でした。で、かなりいろいろ心が揺らいだわけですが、結論としては、やはり今年度はこれが一押しかなと。
     理由については、1次推薦の時にあらかた書いてしまいましたが、この作品がすでに完結しており、期待値でなく、全体像として評価できることは大きいです。後半の展開は、ちょっとやりすぎ感がないではないが、ここで終わらせたことが、この作品を美しくしたと思う。
     あと蛇足で付け加えるなら、脇の友だちキャラの歪みっぷりが類型的でないこと。美人なのに性格が悪すぎる植野、だんだん笑顔が不気味になっていく真柴、反省を知らずマイウェイの川井など、へたに改心したりいい人になったりしないのが素晴らしい。西宮さんのこわい母親も大好きです。(一度はたかれてみたい。)
     大今さんの、次の作品を早く読みたいです。」

    「一次コメント参照ください。」

    「幼い頃の過ちはなかなか難しい。過ちに気づけるのはいつだろうか。
    中学?高校?それとも成人してから?
    気づいても省みたり改めたりするのはさらに難しい。相手がいればなおさら。
    誰にでもある色々な形の歪と、それに向き合うことの辛さと楽しさを思い出させてもらえる。
    7巻というサイズとテンポもとてもいいあつらえ。
    月並みですが、お子さんにも是非どうぞ。」

    「失敗や過ちを経験しながら、それを乗り越えたときに大きな成長が待っている。
    つまずいたとしてもやり直すチャンスは誰の前にも平等にある。
    何度も何度も壁にぶつかって、それでもあきらめないで前を向き続けることの大切さを教えてもらいました。
    登場人物のひとりひとりに、自分の中にある醜いものと尊いものが投影されていたような気がする。
    多くの人々に読んで欲しい。心からそう思える、長く大切にしたい作品です。」

    「完結まで一気に読みました。いじめがどうのとか手話がどうのとかじゃなく、人間ドラマとしてとても面白かった。アニメ化・・・いや実写化するなら絶対見たい。」

    「登場人物たちの、声にならない、気持ちを考えて読みたくなるマンガでした。」

    「キャラクターの描き方が丁寧で、背景まで見えてくる。
    絵は優しいが、セリフや表情がとてもリアルで、全員がきちんと成長していく訳ではない、というのも妙にリアル。」

    「数年前の読み切り作発表で出会い、いままた読み終えてなお様々な視座を与えてくれているマンガだった。
    作者の中で醸成された問いかけもさることながら、その深みに負けず実際の作品として表現をしたということに敬意を払いたい。
    自分が変化すること、他人が変化することを受け入れる寛容さを忘れずにいたい。」

    「これだけ重くなりがちなテーマを扱っていながら、
    綺麗ごとやご都合主義で締めくくらなかったことに、
    大今先生のドラマメイクに対する並々ならぬ執念が感じられました。
    「めでたしめでたし」のように見えもしますが、きっとこのあとも石田や西宮、その周りの人たちはそれなりにしんどい人生を送っていくと思うし、そう思えるだけのキャラクターたちの厚みを全7巻という、決して長くないスパンで描ききったことに驚嘆します。」

    「これをきっかけに読みました。
    思っていたよりも胸クソな描写はすぐに終わり、主人公に好感がもてました。
    若い子が最近漫画を読まなくなっているとよく聞くので、普段あまり漫画を読まない若い子にも読んで欲しいと思いました。」

    「いじめって、いじめる方にもいじめられる方にも、深い傷跡を残す行為。一方で、もしかしていじめって必要悪?こういうことがあってみんな成長してきたのでは、とも考えさせられるマンガです。
    ただ、いじめる方側が、本当にマンガのように考えてくれているといいのですが・・。」

    「耳が聞こえず上手く話せない女の子と、過去に相手をいじめていた男の子。二人が、自分とも、相手とも、正しく向き合って、共に清々しく生きていく姿に救われました。」

    「というか、やっと読了。
    いじめの経験がある私は、正直、問題作と言われている
    この作品が読めるのか、物凄い不安でした。
    途中、過呼吸になるんじゃないかと思うほど
    きつかったけど(笑)←もう大人なのに...
    物語は終焉に向かうにつれてうまく昇華されていきます。
    でも、一緒に笑って良かったねと思えて良かった。
    ちゃあんと私も一緒に良かったと思えて良かった。
    マンガ大賞がなかったら、きっと読んでいなかった作品だと思います。
    ありがと うございました。」

    「テーマが重い。
    快活でもお気楽でも愉快でもなく、居心地が悪い。違和感。ちがう、そうじゃない。

    だが、だからこそ。

    にんげんが、
    とおりいっぺんとうであってたまるか、ざまあみろ。

    という

    一筋縄ではいかないことの気味の良さ。
    複雑さがもたらす妙味、は、絶対にあったと思う。

    なにより、この漫画が週刊少年漫画で連載されたことには大きな意味があったと信じたい。

    『マルドゥック・スクランブル』の冲方丁がこの才能に触れて自作を書き直したというのにも頷いた。」

    「つらい思い出を思い起こしつつも、なるほどこんな選択肢や未来もあったのかと気づかせてくれる作品。
    どんな過去も美しく、現在はもっと、そして未来はさらにそうなのだ、と。
    そんな風に思わせてくれるような、稀有な作品だと思います。」

    「障害といじめという重いテーマに、真摯に誠実に取り組む姿勢にうたれました。意図的に説明を端折る描写にも、読者を信じている作者の気持ちが伝わります。」

    「「いじめ」は自分には関係ないって思ってしまいがちですが
    自分では気づかないだけで人を傷つけているかもしれない。
    困っている人を見過ごしている事もある。
    コミュニケーションが苦手だったり
    卑怯で弱い自分にうんざりする事もある。
    辛いけど逃げずに前向きに進む事が大切なんだとこの作品を読んで感じました。」

    「一次と二次と投票させていただきます。
    素晴らしい物語をありがとうございました。」

    「1巻が衝撃的過ぎて、がつがつ読んでしまいます。 先日、完結してしまいましたが、いつも完結だと もっと読みたい。まだまだ、続けて欲しい!と切に願うのですが この作品はこの7巻完結がすごくいい。 
    主人公を取り巻くまわりの人たちも
    最初は「???」だったけど いろいろと納得していき完結には、みんな各々好きになってしまう。

    週刊誌でやっていたのに
    本当に伏線の回収がきれいで感動しました。」

    「切ない。ただただ切ない。苦しい。痛い。」

    「かつてイジメをした者、された者達が再度信頼しあい、関係を築く姿に感動する。
    言葉を伝えるのは言葉だけではないと痛感。
    彼らの幸せな未来を願ってしまう。」

    「とりかえしのつかないことも、とりかえせる。ものすごい苦悩と努力が必要だが、それでも「可能性はある」とうことに励まされる。」

    「変に大人びた子どもが出てくるマンガばかり読んでいたせいか、この作品に登場する子どもたちの等身大な描かれ方は、新鮮でした。小学6年生で聴覚障害を持つ西宮硝子(しょうこ)への、無邪気で残酷ないじめ、それを持てあましている大人たち。そんな描かれ方はショッキングですが、高校生となった主人公たちが悩み苦しみながら少しでも前へ進もうとする姿は、真に迫るものがありました。
    きれい事を描いただけでは伝わらない、しかし救いがなさすぎるのもどうなのか。一読者として勝手に葛藤していました。
    しかし、その葛藤こそが大事なのだと気付きます。そうやって社会は成り立っているのですから。」

    「心が痛くなるシーンもあるけど、これは読むべき。」

    「人気のうちに連載終了。そして劇場版アニメにもなる。それでもやはりこの作品を外すわけにはいかない。作品に描かれた""差別""は誰の心にも、身の回りにもさまざまな形であるはずだ。でもそのことを忘れてはいけないし、知らない人にはそこにある痛みを想像できるくらいの実際を知っていてほしい。無知という暴力は加減ができず、無知こそが人を傷つける。ちなみにこの欄で他の作品にも触れておくと『ボールルームへようこそ』は最後まで『聲の形』とどちらを3位にするか悩んだし、『ドミトリーともきんす』の異能ぶりにも迷わされた。『BLUE GIANT』『僕のヒーローアカデミア』は今後さらに盛り上がるであろう展開に期待。『イノサン』は時節柄、誰にでもおすすめできる作品ではなかったので票は入れなかったが、裏を返せば『イノサン』のような作品を心置きなく友人にすすめられる世界がかえってくることを切に願う。」

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