選考作品へのおすすめコメント
マンガ大賞2013ノミネート作品

『乙嫁語り』森薫

  • 乙嫁語り 5巻 (ビームコミックス)

  • 選考員コメント・1次選考

    「しきたりとか、習慣とか、いろんな枠組みが強くはたらいていた時代にあっても、やっぱり結婚するとなればいろ んなことを考えたのだろうと思います。今のように「自分」「自己」にこだわるということではないですが、これから先生きていくことや家のことなどは現代以上に考えたことだと思います。そういったことを明るく可愛らしく描けるところがすごい。」

    「女性の魅力が半端ない。私は女だけどいつも誰かに惚れる。可能ならめとりたい。」

    「絵の描き込みがハンパない。芸術的な美しさ、丁寧さ。手触りや土ぼこり、匂いまでもしそうな画面に、すっぽりはまりこんでしまう。異民族の世界を、実に丹念に描写しており、読み応えがある。」

    「19世紀中央アジアを舞台に、12歳の夫より8歳上の天真爛漫なアミル、次々に夫を亡くし義母と二人暮らしのタラス、そして双子のいたずらっこライラとレイリ。魅力的なキャラクターをアーティスティックなまでのタッチで描く森薫ワールド全開な作品です。頑強なまでの男社会の中、どのように女性たちが生きていたのか、生活の中 の文化、自然との共生といった様子を丁寧に描いています。旅のイギリス人であるスミスが主人公、と4巻の帯に書いてありましたが(それまで知りませんでした ( 汗)...)、視点はもっとそれぞれのお嫁さん寄りです。」

    「マンガで伝えられるものの可能性の素晴らしさを感じました。他では表現できないものじゃないでしょうか。」

    「中央アジアに行ってたんですか!?と思うぐらい精密な描写と、躍動感あふれる人物が魅力的。作品を読むと、自由な遊牧民が暮らす中央アジアの世界に一気にタイムスリップしてしまいます。」

    「機は熟した!森ワールドを読感するべし!」

    「きっとセリフ全部外しても、話通じてしまうだろう凄いマンガ。ほら、このマンガ凄いだろうって言いたいし、人に見せたいし、読ませたいし。」

    「19世紀中央アジア。それぞれの乙嫁が織りなす、結婚を巡るいくつかのお話です。精一杯に時代を生きる人々の日常が繊細な筆致で語られていて、まるで絵巻物のよう。彫刻や刺繍にまで着目し、その美しさに引き込んでいく森薫先生の描写力には脱帽です。後の歴史を知っている我々からすると、少しずつ近づいてくるロシアの脅威を前にしての危うさが通奏低音のようにも感じられますが。なお、一次審査の際にも書きましたが、主人公は旅のイギリス人であるスミス、だそうです。アミルじゃなかったんだ...。」

    「雰囲気が好きです。時間をかけて味わいたい名作。」

    「次々登場して来る乙嫁たちがキラキラ輝いていて遠い異国の文化や風習に興味深く引き込まれる。繊細に描き込まれた絵柄と独特の世界観はさすがの読み応えです」

    「細やかな描写やアミルさんの表情ひとつとっても、他の漫画には中々出すことのできないものがあると思います。何より森薫先生が楽しんでこの漫画を描いていらしているんだろうなあと思うし、言葉が多いように感じないのに、描写でそれ以上のことが伝わってくる素晴らしい作品です!」

    「このマンガ、西域好きにはたまらんのです。先日、本棚を整理したら井上靖『楼蘭』が3冊も出てきました。敦煌とか、楼蘭とか、本屋で見つけるとついフラフラと買っちゃうんでしょうね。もう性分なんだと思います。周りの人たちによると、祖父がしてくれた戦中の西域の話を何度も飽きずに聴いていたようです。登場人物たちが織りなす物語が面白いのは勿論なのですが、彼ら、彼女らが着ている衣装の模様や、装飾品などの形なども目を楽しませてくれます。2,3度くらいじゃ楽しみ尽くせないので、枕元に置いて気になるとついつい読み返してしまいます。」

    「様々な地域の風習や生活がかいまみえる新しいタイプのマンガ。次はどんな人たちと出会えるんだろ〜と自分が旅をしている感覚にさせてくれるマンガ。」

    「昨年、一昨年も候補に挙げさせて頂きましたが、今でも何度も繰り返し読んでしまう、そういう引力を持った漫画。この作品を読むと、本当に全登場人物がいきいきとしていて、作者の深い愛情がこもった作品なんだなぁと感じます。19世紀の中央アジア、日本と遠くなかなか知り得ない文化と、時間と場所が違っても変わらない夫婦や親子の愛情の物語。美しい絵でしっかり読ませてくれる、いつまでも手元に残しておきたい漫画です。」

    「現代人が忘れてしまった大事なことが沢山描かれています。僕も現代人ですが。」

    「とにかく絵の描き込みが凄い。よくもまぁ、ストーリーものでここまでのエネルギーを注げるものだと感銘。そして肝心のストーリーがまたいい。作者自身が大事に思っていること、伝えたいことが自然に伝わってくる良作だと思います。」

    「壮大なストーリーは特にないのですが、作者の『この世界観が好き』という情熱に溢れている。一緒に『あーいいよねー』と思えればお気に入りの一作となり得るのですが、評価はわかれるかも。私は好きです。アリです。鷹LOVEです。」

    「この作品を読んでいると、まさに作品の時代、描かれている中央ユーラシアにタイムスリップしたような気分になります。華やかな披露宴、隣同士のご近所さんとの交流、特徴的な衣装。その裏で鹿や鳥を狩り、生きた羊を捌くといった生々しいまでの生きるための生殺与奪の行使。表も裏も、隅々まで「生活」と「文化」を味わえると思いました。」

    「異国の文化を丁寧に描いている世界にいつも引き込まれます。絵に引けをとらないストーリーにも引き込まれます。生まれながらに決まっているような結婚もそれを自然に受けとめていくたくましくてしなやかな主人公たちに魅了されます。」

    「森さんはそりゃ絵も仕事への姿勢もすごいんですが、常に最新刊が彼女のキャリアで最高に面白い、という、陳腐ですらある褒め言葉をほんとうに達成しているところがすごいです。森さんのことをただの「描き込みの凄まじい絵の上手い星人」だと思ってる人は、乙嫁5巻の痛快無比っぷりを読んでみてください。」

    「これも唯一無二と思わせる作品。主人公を複数出すことで、話の流れを面白いものにしている。途中から入った読者についていけないのが難点かもしれないが、そのマイナスを差し引いても読む価値がある。また、日本になじみのない中央アジアの風土は、「日本と違う世界にも生活の営みがある」と改めて感じさせてくれる。この視点を認識するためだけでも読む価値はあるのでは。」

    「タラスの長い髪があらわになるシーンが好きです。女性が美しく、男性が凛々しい。絵に見入ってしまいます。私の一位はこの作品でした。今回のノミネート作品は、生きるということを問われているような、突きつけられているようなものが多かったように思います。楽になること、自由になることを求めて進化し続けてきた世界で、のんびり息をして、SNSの海に頭から突っ込んでいる私のような腑抜けには、羊もさばけないしうさぎの頭も撃てない。ゴキブリには勝てないし触手の先生もころせない...!そしてしきたりの所為で好きな人と結婚できないなんて意味わからない...!と頭を抱えます。しかし、がんじがらめとも思える文化や風習、不便な事ばかりに見える暮らしの中に、美しく深い豊かさ、絶対的にそれに従い生きている人々の中に、ゆるぎない強さとあふれる愛や慈しみが見てとれて、ああこれは今ここにはない、と羨ましくもなるのです。かといって到底彼らのような生き方はできないし生きることを問われたって正しく変わることはできないと確信しているあたり私はやはり全力で腑抜けなのですが、私たちの世界には私たちの世界にしかない、この世界だからこそ生まれるものがあるといいなと、ありますようにと、ただ小さく願ってみるのみです。そしてもう一つ願い事。スミスとタラスが幸せになりますように!」

    「前回は始まったばかりということもあり推し切れなかったが、今回は何のためらいもなし。熱く血の通ったキャラクター、フェティッシュで変態的な描き込み、日々の暮らしをいとおしく輝かせる語り口、いずれもハイレベルの一級品。あの傑作『エマ』に立ち止まらない精進には頭が下がる。森薫先生はマンガ界の宝です。」

    「2次投票の候補作の中で、一番続きを早く読みたい作品です。「嫁ぐこと」の意味が今よりずっと家族全体にとって大きな意味を持った時代と地域で、でもその中の各キャラクターのここの気持ちが、かわいらしさが伝わってきます。「乙嫁」の名にふさわしい、かわいいお嫁さんばかりです。」

    「双子が可愛いです!食べ物が美味しそうです。」

    「ふしぎ!別の世界につれていかれる!」

    選考員コメント・2次選考

    「19世紀の中央アジア、12歳のカルルクの元に20歳のアミルが嫁ぐ話から始まる物語は、英国人スミスの目を通して「家」や家族、そこに生きる人々の結び付き、継承されていくもの、そして文化の違いを克明に表していきます。毅然とした佇まいや、壮大な自然、人の営みを愛情深く、丁寧に描かれる背景や装飾品も含め見応えたっぷりです。」

    「微にいり細にいり描き込まれた遊牧民の価値観や生活。この世界に住む人々が織りなす物語を、当然のように存在している素敵な世界のように、受け止めてしまいます。」

    「丁寧な生活描写と、日々の営みの中に事件があると教えてくれる力強さ。」

    「Fellows!の雄。テーマが中央アジアというのがこういった絵柄の作家さんにして素敵で、丁寧な絵とあいまって楽しく読めます。」

    「19世紀後半の中央アジアを舞台に、乙嫁たちの生活を活き活きと描いた秀作である。物語の舞台となる風景・建物の様子や衣服・装飾品の細部まで細密に描き込まれたコマから、作者が作品に費やした膨大なエネルギーが熱く伝わってくる。乙嫁たちのキャラクターも魅力的で多彩。中央アジアで「乙嫁探し」をしたくなる。」

    「丹念な上にも丹念な描写を積み重ねていくことで生み出されるリアルと、時に余りにもマンガ的なテイストの融合がいつもながらに絶妙。細かい日常描写が作品の持ち味であるがゆえ、物語の進行がいささかゆっくりなのが気にならないと言えば嘘にはなるが、タイトルを思えば、またそれも味わいと思うべきか。」

    「圧倒的な広がりと緻密さの同居する作画と、1900年台初頭の中央アジアに暮らす人々の生活・習慣・文化を軸にして展開される「日常」モノの究極系。神は細部に宿るという言葉を体現する作品」

    「実際に行った事も無く見た事もない時代・地域の話の筈なのに、そこに住む人々の息遣いを確かに感じられるのが凄い。ストーリーもシリアスとちょっとしたギャグのバランスが心地よく、緻密に書き込まれた画も圧巻。男性は力強く、女性は柔らかく描かれている点も素晴らしい。全ての年代の人に「読んでみて!」とおススメできます。」

    「何回もノミネートされるのは、さすがだと思う。台詞がないところでも読ませる森ワールドがいい♪」

    「大好きなもの、描きたいものを、情熱を持って、しつこく、ただ丁寧に書き続ける才能。そして、イメージ通りに表現できる才能。それらすべてを備えた、稀有な作家であり、それにぴったりの作品(を見つけられるのもまた才能!)。」

    「衣装・紋様の美しさもさることながら、登場する食べ物の美味しそうなこと!ニンジンの焼きメシ(ポロ)に五目肉うどん(ラグマン)、羊とキジの串焼き(ズィフ・カワプ)、全部食べたい。5巻に出てくる祝宴料理も、もう、もう、もう!読むとおなかがグーグー鳴り出す作品です」

    「変質的なまでの衣装の描き込みに宿るフェティシズム。19世紀後半の中央アジアの衣食住や文化・風俗が克明に描かれているが、読後に強く感じたのは「この作品を一番楽しんでいるのは著者自身ではないか?」ということであり、それがまた羨ましくもある。」

    「画力に賞賛!!!」

    「すでにマンガ好きにはよく知られた作品なので、「あえて今投票することもないか」という気持ちはありますが、ここらで大きな賞を1個獲ってマンガ好き以外にも知られるようになるといいな〜ということで1票。前回のノミネートのときは「まだ巻数が少ない」と思ったのですが、5巻まで巻数を重ね、作品としても十分「熟した」ように思います。」

    「人生の一番の転機であろう結婚を、時代の転機と結びつけつつ離しつつ、ゆっくりとていねいな文脈で綴られて行くようなマンガです。あせる必要も無く落ち着けるわけでもない空気感が今まで感じたことの無い感覚を味わさせてくれるマンガです。」

    「細部には 2 種類ある。神の宿る細部と神の宿らない細部。このマンガで描かれているのは神の宿る細部。職人の手仕事の確かさとか、想いと願いと歴史が織り込リこまれた刺繍のひとひらとか、生きる糧としての料理の湯気とか、愛した女の笑みとか、ただただそのまんますぎる自然の茫漠さとか。そういう、人々の営みのひとつひとつに宿っている小さくて大事ななにかを、このマンガはとらえているんじゃないかと思う。視界が、急に、輝きと精度を増す感じ。美しい。」

    「出てくる食べ物、さらに絢爛な衣類、建物、道具、その他もろもろ。全て、「手作り」です。そして、その刺繍などがペンで、つまりは手作業で絵に描かれると、なんとも言えない「手間」が作り出す激しいオーラが立ち上ります。その手作りのものに囲まれているこの作品中に出てくる人物たちも、膨大な手間を加えられて生きてきた、周囲の人間たちの手間の賜物であることが、強烈に感じられるんですよね。じつに、「身が詰まった」マンガです。あと、専門家の方によると、時代考証がどんどん正しくなっている、進化するマンガ、でもあるそうですよ!」

    「19世紀中央アジアの、大陸に住む民族の暮らしを描いた力作。ものすごく丁寧で緻密な描きっぷりに、作者のあふれる愛を感じてしまう。この世界観が大好きなんだろうなあ、と(笑)。読んでいると、すっぽりとその世界に入り込んでしまって、いっとき現実を忘れてしまうほど。読み応えがあります。」

    「描き込みが非常に緻密で、最初は目にうるさいんじゃないか?と思ったけれど、繊細で丁寧な描き込みなので見ていて綺麗だし楽しい。」

    「お嫁さんたちがかわいすぎる。人物、風物、食べ物、着物、描く「物」すべてが美しい。」

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