選考作品へおすすめコメント

マンガ大賞2013大賞作品

『海街diary』吉田秋生


海街diary(うみまちダイアリー)5 群青 (flowers コミックス)

選考員コメント・1次選考

「読み終わっても近くに海があるような錯覚が続いている。実際にいそうな人達、ありそうな店、そんな街の描写も 魅力。」

「中学生を主人公にした物語だが、普通の学園ものとはまったく違い、話の奥行きが非常に深い。登場人物それぞれ の人生が、それぞれひとつの物語になっており、それがまた複雑に絡み合って、大きな物語を作っている。特に 5 巻は人の生死がテーマになっていて、心に響いた。」

「4姉妹のそれぞれの葛藤や成長が奇をてらわず描かれている。」

「どんな人にも勧められるマンガ。そんなマンガあんまりないと思うんですよね。毎年投票してて、もうみんな知っ てるんで、どうしようか悩んだんですけど、やっぱり入れました。」

「恋愛や家族や友人など、他者と自己とのつながりを真摯に描いたまんが。どんな読み手にも必ずどこかに心に響く シーンや言葉があるはず。響きすぎることも多々あるので、外で読むのは注意が必要。」

「年に一冊ペースで刊行されているので、ずいぶん前からの作品のような気もしますが。やっぱりすきなものはすき なので。「家族のつながり」っていうのはもちろん作品の根底に流れる大きなテーマではあります。ただ、個々に 思いをはせることも様々で。実際のところ、思っている以上に「生活」していくっていうことは平坦ではないので すけれども。それを拒絶するのではなく、受け入れた上でどう向き合うか。この作品は、決して荒ぶることなく、「ちゃ んと」生きることに向き合っている真摯な人々の生活の一片をみせてくれる。ひとりじゃどうすることもできない とき、家族がいる。仲間がいる。それがどれほどかけがえのないものかということを、常に頭の片隅にとどめさせ ておいてくれる、私にとって大切な作品です。もっともっともっと評価されていいはず!」

「圧倒的完成度。素晴らしいマンガ、というよりも、文学・映画といったジャンルすべてを合わせた中でも抜きんで た作品だと思う。隙もなく、無駄もなく、複雑なのに分かりやすいストーリー構成。文学的だったり、映画的だっ たり、漫画チックだったりと場面ごとに効果的な作画演出。読後は、続きを読みたいという欲求よりも、もう一度 読み返したいという気持ちのほうが上回る。すべてが極上の短編で成り立っている連作形式だからか。引っ越しば かりで幼少から同じ場所に長年住んだことのない私の個人的な意見としては、知り合いの知り合いが知り合いだっ たという展開が多いので、湘南ってそんな小さな村レベルのコミュニティーなの?というのが唯一の疑問としては ありますが。」

「5巻まで読み終わったとき、少ししてから、泣いてしまった。読みながら泣くことはあっても、読み終わって、し みじみと泣けてくるマンガは私の中ではめずらしい。登場人物たちの誠実さと狡さと思慮深さ。どうにもならない けど、受け入れて生きて行くこと。目を背けられない悔しさ。それらを優しく擁立する世界が、なんとも言えない 嬉しさと悲しさを遅れて連れてきた。1巻のころから5巻のころまでで、主人公の住む舞台はだんだん狭くなって いっている。1年住む間に、いろいろな人間関係が知らないところでつながっていき、傷つけたくない人が増え、「モ ヤモヤ」が出来ていく。スズが新天地で暮らして行く1年は、多くの人が抱えるリアルじゃないかと思う。その中 で誠実に向き合ってもがける主人公を、羨ましいと思いつつ共感し、そのことで癒されたと感じた。真面目に語っ てしまいましたが、そのくらいこのマンガを多くの人に勧めたい。」

選考員コメント・2次選考

「『人とのつながり』から生まれる様々な縁や想いがひとつひとつ心に染み入る作品です。重いテーマながら温かく 描かれていて鎌倉の町並みや空気感が伝わってくる何度も読み返したい名作です」

「4巻で「ヒマラヤの鶴」を読んだとき、ここがこの物語のピークかと思っていたのですが、そんな浅薄な予想なぞ 軽く蹴散らしてくれました。四姉妹だけでなく全ての登場人物が主役にもなり、脇役にもなる、そんな厚みのある 物語です。高校生のときに「BANANA FISH」に出会ってから20年以上続く吉田秋生祭りは今も続行中です。」

「「生きる」ということに寄り添ってくれている。ページをめくるたびに、いつもそう思う。ものすごく前向きなわ けでも、驚くほど悲劇的なわけでもない。ただ、たぶん「起こってもおかしくない」くらいの出来事が、よいことも、わるいことも、描かれていく。私は好きです。大きい物語ではないけれど、世界を変えるような激しさもなけ れば怒涛さも驚きもないけれど。毎日を、周囲を、そして自分を。いとおしく思いながら生きていかせてくれる物 語。そんなものに出会えることが、幸運じゃなかったら何だと言うの?この作品と共に、年を重ねられるのが嬉しくてなりません。あなたにも、そう思って頂けたら何よりです。」

「マンガ大賞でしょ?まずこれを大賞にせずにどうするんですか。」

「派手さはないが静かに深く暖かく丁寧に物語が進行していきます。登場人物の息遣いが伝わるような、リアリティ のある作品だと感じました。どっぷり感情移入させられます。よくできた小説を読んでいるような気持ちです。」

「みんなに色んなことがおこるのだけど、巻がふえるごとに絆が深まっていくところが好き。ついつい近所のおばちゃ ん的気分で自分も関わってるかのような錯覚におちるマンガです」

「人は生きていると表からは分からないけど思うよりも大きな悩みや傷を抱えていることが多い。だけれでも時間は 勝手に進むし、へこたれてばかりいられない ! そう思わせてくれるさ作品です。派手さはありませんが、リアルで 等身大なストーリーがとても身に染み入ります。」

「・・・とても良いマンガです!!!家族。とは。友情とは。夢とは。恋とは。心が温かくなる。苦しくもなるけれど、 たぶん読んでいる時に流れているこの涙はいい涙だと思う。全員生きているなあ読んでいると同じ時を鎌倉で生活 している感覚になります。余談ですがしらすトーストとアジフライが食べたくて仕方ないです。」

「鎌倉で過ごす姉妹の物語で、家族のつながり、地域のつながりを軸に物語が展開してゆきます。ほのぼのした情景 を思い浮かべがちですが、悲しいこと、つらいこともちゃんと起こります。その中でも主人公は日々の生活を維持 し、姉妹で協力してたくましく生きていきます。このマンガですごいなと思うところはすべてが実際に起こり得そ うなぐらいのレベルの出来事で構成されていること。そのバランスがよすぎる気がします。そのため、すごく身近 に感じられて、内容がすっと心にはいってきます。浮いたり沈んだりするけど、淡々と進む日常。いろんなことを 考えながら乗り越えていかないといけない。なんとなく生きてゆくっていうことはこういくことなのかなってごく ごく自然に思えました。こうなんだよ!って主張を突きつけられるのではなく、じんわりと自然に心に入って来る 感じで。優しい気分になりたいときはぜひ読んでほしい一冊です。ちなみに、このマンガは一巻ごとに副題が違う のですが、一巻でその副題に収束するように物語が進むのもとても美しいです。特に最新刊の群青は見事につなが ります。読み終わった時にお見事!って感じで心がすっとして、とてもいい気分になれました。」

「今まで未読だったので今回ようやく手に取ってみたのですが。なぜ私、今まで読もうとしなかった!と過去の自分 を責めたい。四姉妹をとりまく環境は意外とヘビーですが、それでもほのぼのと読めてしまうのは作者の力量でしょ うか。安心して人に薦められる作品だと思います。」

「今年の作品か?っていう話になると、まあ違うんだろうなあとも思いますが。やっぱりいい作品はいい作品なので。 日々のいいことも悪いことも、困ったことも嬉しかったことも、常に平等に扱っているエピソードの数々。それは 本当に私たちがリアルタイムで過ごしていることであって。そういったことに必要以上に動揺せず、ひたすら真摯 に向き合う姉妹の姿勢がすてきだなあと。こうありたいなあと。いつも思ってはいるのですが。まあ、むずかしい ですね。たはは。読むたびに背筋がしゃんとする、大好きな作品です。」

「哀しくて切なくて涙がこぼれそうになる時も楽しくて可笑しくて笑顔になる時も家族や友達と一緒に感じる事が出 来るそんな幸せと恥ずかしもなく言っちゃいたくなる『海街 diary』が本当に好きなんです」

「鎌倉にいけば、主人公たちがあの細い道をワイワイ言いながら歩いていそう。。そんな漫画です。複雑な家庭環境・人間模様から静かに、強く生きる人たち。シリアスな中にもユーモアもあり、堅苦しくありません。次の巻まで、 一体どのくらい待てばいいのだろうーー(涙)!」

「1話1話がぎゅっとして読んでいて、とてもいとおしくなる作品。鎌倉の四姉妹、それを囲むまわりのひとたち。 胸がほんわかしたり、ぎゅっとなったり。いろんな気持ちがわきあがります。大事に大事にしていきたい漫画です。 もっとたくさんの人に知ってもらいたいっと思います。」

「吉田先生とこの作品がある種のマンガ表現の最高峰なのはいまさら言うまでもないのですが、まさか絶品のグルメ マンガになるとは思ってませんでした。」

「すぽっとハマりました。物語が進むにつれて、繋がり重なっていくことに一喜一憂できるのは、読んだ者だけが味 わえる幸福。」

「実話の迫力や実体験の説得力で読ませるマンガが最近多いかなと思う。今回の候補作にもいくつかありました。も ちろんそれはそれで大いに「アリ」なのですが、丁寧に作り込まれたフィクションが、高度な技量をもってビジュ アルに展開されるマンガを読む時の味わいは、やはり何ものにも代え難いマンガならではの醍醐味だと感じられて なりません。フィクションなのに、絵なのに、物語なのに、ものすごくリアル。「海街Diary」はそんなマン ガならではの面白さを一貫して追い求めてきた(に違いない)吉田秋生ワールドの集大成というか、洗練の極みと いう印象があります。鎌倉を舞台に、静謐だけどなんとも「染みる」エピソードを積み重ね、ひとの気持ちという 不可思議でいとおしいものを丁寧に丁寧に映し出していく。日本映画の名作を観るような、というよりもそれらを ある意味で超えた、と言いたい。5巻で展開されるひとの生き死ににまつわるストーリーを読んで、何も感じない 大人の読者はいないと思いたい。お勧めという点で今回イチ押し。続巻を静かな気持ちで待ちたい。」

「「文学的な」「映画のよう」といった、他の表現手段を引用する評価はあまり好きでないのだが、マンガとして読ん でいてこれほど「映像が目に浮かぶ」作品は他に思いつかない。ほとんどがキャラクター達の会話で進行するにも 関わらず、彼らの言葉を発した時の内なる感情が、ストレートに読み手の心に響いてくるからだろう。これもまた マンガという表現の至高のレベルだと思う。もう一つ、舞台となる「鎌倉」という土地への愛情も深く伝わってき て、じんわり嬉しい。」

「改めて全巻読み返してみてこれだけトラウマや難病や死を描いておきながらここまで読後感が爽やかな話、ってな いな、と。1年1冊。これからものんびりと書き続けて欲しい1作です。」

「登場人物がかみあっているなあ、と思います。それぞれのいいところも、成長していくところも、全て有機的に絡 み合っていて、それが物語に深みを与えていると思います。無駄なキャラ付けがないから、みんなが生きるんだろ うなあと感じます。」

「女四人姉妹それぞれにスポットライトを当てつつ、ゆるやかな時間の流れと、成長を丁寧に描く。非常に上質な作 品。鎌倉に行きたくなります。」

「淡々と紡がれる物語は、読む時期、読む人の立場によって受け止め方が随分変わってくるのだろうと思う。避けて 通れない事柄や、悲しい事があっても人は想いを寄せ合い生きていくのだろうといろいろ考えさせてくれる。さざ なみのようにうちては返し、何かを心に残していく物語の行く末を見守りたい。」

「ずっと大好きな作品。こころの触れ合い、あたたかさ、しあわせのみつけ方。傷つくことも傷つけてしまうこと もあるけれど、ゆるやかに、柔らかに...生きるヒントがいっぱいです。鎌倉にすんでみたいなぁ〜」

「第1次投票の時にコメントを書きなぐったので、そのあたりは割愛しますが、今このタイミングで一番自分に響い たマンガです。みんなに勧めたい。読むときは、ぜひ5巻までまとめて読んでほしいです。」

「ときめき、矜恃、迷い、悔恨、わだかまり...繊細な心の動きを巧みに紡ぎ出し、小さな街の人模様を織りあげる名 人芸。これ見よがしな技巧もひねった構成もあざとい展開もなく、作品の中を確かに生きている人々の自然な営み が、落ち着いた味わいの綾織りとなっていく。恋するすずの顔がほんのちょっとずつ大人びていくのも、お見事!」

「奇をてらわない、人を丁寧に扱う視点に共感できる。4 姉妹や周辺の人たちの強さや弱さが自分と重なり作品の世 界に静かに引き込まれていく。」

「ただでさえ構成・演出のうまい作家が円熟味を増した、1編1編がすべて傑作の連作短編集。何度読んでも飽きな い。文学的・映画的でありながら、漫画ならではの表現で描かれていて、漫画でしか成り立たない作品でもある。」

「不倫した父親が飛び出した家に残して来た、母親の違う姉たちのもとに引き取られる少女が主人公で、その姉た ちも、勤め先の男性と不倫をしたり、ダメな男に引っかかったりと奔放な生き様。一方で、少女の同級生は病気で 脚を切断して得意のサッカーを諦めざるを得なくなり、少女の知り合いの女性は遺産の相続争いに悩みつつ、自身 は病気で余命いくばくもないという、そんなドロドロにグチャグチャな人間模様が描かれているにも関わらず、静 かで明るくて、優しくて前向きな雰囲気に溢れているのは、時にコミカルで全体として丁寧な筆致の成せる技。ジ ンワリとにじんでくる人の心の機微を感じ、喧噪にあたふたしてばかりのわが身を省みて静かに、確かに生きる大 切さをつかみとろう。」

「初期の軽妙なノリも楽しかったが、近刊での個々の登場人物の掘り下げの巧みさはさすが。ゆるやかに進む日常の 中での喜怒哀楽がバランス良く描かれていくのはいかにも吉田秋生流。第1回のマンガ大賞 2008 に続いてこの作 品を推せる幸せを噛みしめたい。」

「大人は大人であり、子どもは子どもである、ということをきっぱり告げるマンガだと思う。どれだけ子どもがしっ かりしていようとも、どれだけ大人と仲良しだろうと、それぞれの場所にまず、立つことから始めないといけない のだなあ、と。私も成熟した大人でありたいという気持ちを強くした。」

「古都・鎌倉に暮らす四姉妹の物語。3 人の姉にとっては、異母妹にあたる「すず」を軸に、家族の情景を描く。姉 たちが直面する切ない恋物語あり、ほろ苦い初恋話あり、さらにはバカでお調子ものの男子が、あるとき、"いい男" に脱皮していく様子も鮮やかに切り取る。人物描写がじんわり心にしみ込み、何度も読み返したくなる。」

「人間ドラマって感じがする。ほんわかしているが、内容がしっかりしている。魅せられる。読まされる。すごい。 ※僅差で ぼくらのフンカ祭 がつめてました。」

「家族愛。姉妹愛。人と人の繋がりがどんどん疎くなってゆく社会の中で、しっかりと人間関係を築き育んでいる登 場人物たち。どこかホッとさせられる半面、今の自分に足りない部分を提示されているような気持ちにもなる。ま さに秀作!!!」

「じんわりくる。私はこの漫画の影響で鎌倉が大好きになった。」

「もう、ひれ伏すしかありません。すべての登場人物が、頭と心をどこまでも丁寧に使って生きています。中学生も、 お医者さんも、死期を悟った女性も、未亡人も、その家族も。起きる事件は必ずしもイージーなものではないのに、 そこで、誰かのせいにするどころか、逃げたり、任せたりすらしない。それを、鎌倉という舞台が、静かにまるご と受け止めている、オトナの超良品マンガです。」

「ぜひ多くの方に読んでいただきたい傑作。ちょっと複雑な事情のある四姉妹の日常、というとありきたりに感じる が、この物語の奥深さは言葉では言い尽くせない。姉妹だけでなく、登場人物ひとりひとりの物語、どれをとって もずしんと心に響く。でもそれは重いというより、じんわりと温かく、少し切ない。人間の長所も短所もひっくる めて愛するかのような、作者の懐の大きさを感じる。」

「現代の「若草物語」。4姉妹物の新しい傑作。」