選考作品へおすすめコメント

マンガ大賞2012一次選考作品

『アオイホノオ』島本和彦


「1980年代初め。まだまだ素朴で家内制手工業的だったマンガ、アニメ業界の舞台裏を、マンガ的誇張はあるのだろうけどほぼ実話?と思えるエピソードで描く。主人公ホノオは週刊少年サンデーの「炎の転校生」で連載デビューする前の島本和彦の分身だろうし、DAICON時代の岡田斗司夫や庵野秀明など大阪の大学生だった歴々は実名で描かれる。よくは知らないけれど、きっと風貌もそのままなのだろう(とりわけ岡田氏の描き方ときたら......)。2012年の現在もそういう面はあるにせよ、当時、アマチュアが一夜にしてプロに、そして人気作家にというアメリカンストーリー(日本だけど)的な展開はもしかしたら手に届くと思えるところにあり(少なくとも手が届くような気はしていて)、その意味でコミケ・同人誌文化が爛熟してプロとアマチュアが相互乗り入れ的にあるいは並行的になった今の状況に比べると、シンプルかつ、ある意味で健全なおとぎ話のように懐かしい気分で楽しめる。そして、まだマンガ好きが「オタク」がさげすまれるようになる前の、でも田中康夫の「なんとなく、クリスタル」デビューよりは後の、まだぎりぎり平和な時代の文系男子の青春ストーリーは、当時を知らない若い読者の方々にもきっと新鮮だろうと思います。現在7巻、おそらくラストチャンスということもあって挙げます。」

「社会に出る一歩手前、空回りが許される最後の時期の盛大な空回りを描いて余りある名作。そこに日本のマンガ、アニメの大きな転換期(高橋留美子、あだち充の躍進、ゼネプロ→ガイナックス勢の胎動)が背景に描かれることで、資料的価値まで付加されてきてしまって、もう、とにかく贅沢な一作。いよいよあの記念碑的作品が生み出される...!」

「面白いなぁ。一見まんが道的自伝のフリして(笑)日本漫画界の技法やビジネスモデルの進化を分解整理。実は高度なマンガ業界サバイバルなノウハウ書でもあるんじゃないでししょうか。NHK とかで実写ドラマとかになったらいいなぁ。」