選考作品へおすすめコメント

マンガ大賞

『それでも町は廻っている』(石黒正数)


「十分にメジャーになった感はあるが、候補に挙げられる最終年に改めて推しておきたい。」

「話が積み重なるほどに、各キャラクターに新しい魅力が加わっていくのに、それでいてブレがないあたりが、この作品のキャラクターの魅力につながっているのだと思います。高校生・歩鳥の頭の中を反映したような世界観もとても暖かくていい感じです。」

「メイドもののようでメイドものでなし、ミステリーありSFあり、ちょっと不思議なご町内ドタバタハートフルコメディー。刺激的過ぎず、ひねりすぎず、ウエット過ぎず、ドライすぎず。作者の知的で絶妙なさじ加減が心地いい。舞台になっている商店街(のモデル)はいま私のすむ町。何の変哲もない所ですが、その変哲のなさ(変な日本語)がいいんだな。」

「2009年の1次でも推したのですが、2010年に入ってからの快進撃(本作も、作者の石黒氏も)は見事。メイド喫茶を舞台のひとつにしながら、文字通りの意味での萌え要素は(たぶん)なく、まったりオフビートでローファイな挿話が次々展開するところは、いまや読者にとっては、現実の社会で今や得がたい「理想の日常」なのだと思う。主人公の女子高生・嵐山歩鳥を取り巻く世界からはあらゆる世代、属性の隣人が消失しておらず、それぞれが血の通った存在感をきちんと発散している。現実の今どきの10代が「自分に直接関わりのない社会が見えなくなっている」とよく言われる(事実かどうかはさておき)ことを踏まえれば、つまりこのマンガは現実にないものをみせてくれるファンタジーでもあるのでしょう。
 で、本作のほんとうの主役は、タイトル通りというか「商店街」そのもの。日常の中で住人が関与し合うコミュニティーのありようこそを描きたい、という作者の意図を強く感じる。たとえば8巻収載、出色の第65話「さよなら麺類」(笑)。ふだん脱力のコメディーを衒っているからこそ、商店街の現状を前にした歩鳥の力説と諦観が生きてくる(詳しくはぜひご一読を!)。作者のメンタリティーも作品が描かれるバックグラウンドも何も知らないいち読者としては、まっとうな「人のいい」マンガだと感じた、と言いたい。」