選考作品へおすすめコメント

マンガ大賞

『シュトヘル』伊藤悠


「13世紀初頭、現在の中国北西部にあった西夏国の女戦士・シュトヘルと、西夏国と敵対するモンゴル軍に与する、ツォグ族の王子・ユルールとの出会いで動き出す、壮大な戦いを描いた伝奇作品。物語はまだ序盤ですが、戦乱の時代を生きる戦士たちの生き死にの描写に、思わず息を飲むくらい惹き込まれます。」

「古代中国を舞台に、滅亡した文明と文化をモチーフとした重厚な大河ロマンながらも、スピーディーなアクションも存分に楽しませてくれる作品。壮大さと話のスケール感を見せつつ、ここまでしっかり娯楽アクションとしても成り立つ作品はそう無い。」

「悪霊と呼ばれ恐れられる女戦士シュトヘルと、敵国である西夏の文字を守る為に一族を捨てたモンゴルの皇子ユルール。敵同士である二人が一緒に行動していく過程で明かされる過去。ユルールが守ろうとしている文字によって死に逝く存在を忘れずにいられる事を知った時のシュトヘルの感情に大きく心を揺さ振られた。」

「決してわかりやすい話と絵ではないけど、「本」を愛する人ならば読まなければならない1冊だと思う。不本意な形で終わった『皇国の守護者』の答えを、作者は今作でだそうとしてるのではないだろうか。『殺すとか壊すとかじゃなくて、伝えるとかつなぐとかそういう生き方だってあるはずだ』これは、「皇国?」の主人公新城が「できなかったこと」。したくてもできなくて、できなくて苦しくて。この生き方を、力がすべての物差しである「戦乱の世」でおこなおうとする主人公。それは暴力とは異なる形の強さ。そしてそれが本の力であるということ。シュトヘルと王子の関係にも目が離せず、示唆の多い作品。」