選考作品へおすすめコメント

マンガ大賞

『へうげもの』山田芳裕


『戦国顔芸絵巻?めくるめく擬音の世界をお楽しみ下さい?』

『美意識のユニバース。もう説明はいらない。全身はやりものの君、買うべきは服ではない。一枚ずつ脱ぎ捨てながら、この作品とともにレジへ突っこめ!!』

『織田信長や豊臣秀吉など、歴史に疎い私でも知っている人物が多々登場しますが、主人公は古田織部。実在する人物かどうかも知りませんが、この人マニアックでありオタクです。歴史の流れの中にオタクの真髄を組み込んだすごいマンガ!!おもしろすぎます。』

『山田芳裕・著、「モーニング」(講談社)連載。戦国時代を舞台にしたマンガは数あれど、主人公を古田織部とし、戦国の世の動乱を「欲」の観点から山田流に解釈した物語は全く新鮮。戦国時代モノといえばとかく"戦(いくさ)"そのものに重きが置かれがちだが、名立たる戦国大名が"名物"に命を懸ける様や、"茶の湯"というものが当時いかに重要視されていたのかを描く本作は、これまでに無い興味をかきたてるものがある。そこに、作者お得意の強烈にデフォルメされたキャラクターと大胆な画面構成が相まって、登場人物の喜怒哀楽が遺憾なく読者へ伝わってくるのも、マンガという媒体ならではの面白さである。余談だが、この『へうげもの』は雑誌で読む方が面白さが増す漫画でもある。山田芳裕のダイナミックな作画は大きな誌面ではより迫力を増すし、編集者による洒落のきいた煽り文句や欄外のあらすじ文など、単行本には収録されない部分でも楽しむことができる。単行本派の人もぜひ雑誌で読んで貰いたい作品である。』

『現在の茶の湯を見て、戦国武将たちはこんな所作をしていたのだろうか、と不思議に思うことがある。時代が現代にぐっと近くなるが、電力の鬼と呼ばれた松永耳庵が、名物茶碗にやかんで湯を注いで茶を点てている写真を見るとその思いはさらに強くなる。茶の湯はもっとドキドキとワクワクに溢れていて、豪快なものだったのではないかと。そう考えると、「へうげもの」は戦国時代の茶の湯のドキドキやワクワクを現代に蘇らせているといえないだろうか。今では当たり前の意匠も、その当時は驚くほど斬新だったのではあるまいか。古田織部が主人公というのも絶妙で、これが利休だと深遠で重くなりすぎるだろうし、小堀遠州だと綺麗すぎて爆発力に欠ける。山上宗二は偏屈で面白そうだが政治的な絡みが少ない。傷のない茶碗をわざわざ壊して金継ぎの美しさを追求してしまうような彼だからこそ、こんな動きのある茶の湯マンガが生まれたのだろう。』


『「へうげもの」古田織部の生涯を描く作品だが、彼のみならず、戦国の世の魅力的な登場人物たちと、魅力的なモノを、独創的に描き出された一作。山田芳裕の絵としてのダイナミックな表現や、擬音表現の面白さには以前から定評はあるけれども、この作品は、それが人間などの動作にだけでなく、うつわや茶席といった静的なものにまで広がって、そしてその上、表現されたものの魅力を存分に伝えきっているのが凄い。 山田芳裕が歴史上の登場人物を、どのように見て、それをどのように描くのか、また大名物と呼ばれる茶器を、どのように見て、どのように描くのか。その「描き方」──つまり、山田芳裕の「言語感覚」のキレのよさを、何度も味わえる一作です。』