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マンガ大賞2016一次選考作品

『花井沢町公民館便り』ヤマシタトモコ


花井沢町公民館便り(1) (アフタヌーンKC)

「事故に巻き込まれ、周囲から隔離されてしまった花井沢町。とはいえ隔離されてしまった(通り抜けられない)のは生命反応のある有機体だけで、物品の支給も携帯電話やインターネットの電波も人の声も問題なく通る。目の前にいる「外」の人と物品の授受をしたり、境界線近くで会話をしたりすることはできるけれど、触れることは決してできない、という状況下に置かれた町で、普通に暮らす人々の物語。ものすごくおそろしい物語だ。子供たちは学校に行き、大人たちは町の中かネットでできる仕事をする。食事を作り、髪を切り、アイドルに熱狂し、盗難が起これば犯人を捜し、死者を弔いながら生きる。町にはわれわれが暮らす町と同様におかしな人はいるけれど、それも内包して「ふつう」だと思う。住人がそれらに一喜一憂する様子は、われわれの日常そのものだ。あまりにも日常的すぎて見逃してしまいがちな「あるある」や、ちょっとした棘を描き続けているヤマシタトモコならではの、おかしみや悲しみも十分にある。誰も出られないし、誰も入ってこられない町は、滅びが約束された町だ。いずれくる滅びを知りながら、外部の人間から腫物のように扱われながら、住人たちの多くは凶悪犯罪に手を染めたり、狂ったりしないで、腐ったりもしないで生きている。事故から十数年という月日が、住人たちを異常な状況に適応させている。絶望も諦めも苛立ちも、すでに過ぎ去ったもののように見える。そのふつうさが最高に残酷で、怖いもの見たさで何度も読み返してしまう。1巻を最後まで読んでから第一話に戻ると、背筋が凍る。超傑作。」

「目に見えない透明なシェルターに覆われてしまい、外からは入れず、内側からも出ていけなくなってしまった花井沢町。そこに住む人々はそれぞれの暮らしをなんとか守ろうと生きていく。その懸命さに心打たれる話もあれば、外界から隔離されたことで人の欲望があらわになる話もあり、多彩な物語が楽しめる。スティーブン・キングの『アンダー・ザ・ドーム』と比べながら読むのも面白い。」

「膜で覆われてしまった町。どこからも出られない町の中での滅ぶまでの生活。自分だったらどう暮らすかな。途中で壊れちゃうんじゃないかな。と悶々と考えながらも答えを出せないマンガでした。」