選考作品へのおすすめコメント
マンガ大賞2013一次選考作品

『萩尾望都作品集 なのはな』萩尾望都

  • なのはな (フラワーコミックススペシャル)

  • 「福島原発の恐怖を、漫画に昇華した作品。萩尾さんの考えがよく現れており、ぜひ読んでほしい。」

    「失ってしまったものは取り戻せない。壊れてしまったものは元通りには治らない。それは真理。絶対の掟。神様にだって変えられない。失ってしまった人を思って泣くのはいい。泣いて心が安まるのだったら、いくらだって泣けばいい。壊れてしまった世界のために怒るのもいい。怒って気持ちを鎮めなければ、心が破裂してしまうんだったら、限界が来るまで怒り続けるしかない。けれども、心ゆくまで泣いたり、怒ったりしたあとは、どうやったら笑い顔でいっぱいの世の中にできるのかを考えよう。もう誰も失わず、何も壊さない世界を作れるのかを考えよう。萩尾望都の「なのはな」(小学館、1143円)という漫画の短編集なら、そんな活動にきっと役にたつ。世界はまだ終わってはいない。こうして今も存在して、そしてこれからも続いていく。漫画家としてそのことを伝え、届けようとして、あの日からの1年をかけて、何本もの漫画を描いてきた萩尾望都の思いが込められた短編漫画たち。それらを読み、描かれた家族の物語を、示されたさまざまな寓意をどう受け止め、どんな行動をとっていけばいいのかを考えよう。読んで広め、伝えることで、もう絶対に過ちを繰り返さないで、これからを生きていく決意を、自分の胸と、そして大勢の人の胸に刻み込もう。」

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